エネルギーから見たトランポリンの跳躍

2019年

1月

22日

スタンスと跳躍高さ

 日本体育協会の公認コーチ資格の講習で、「スタンスを広く捕るとたわみが少なくなり、高さが出なくなるという」という説明を受けました。一般的にそう考えられていますし、自分もかつてはそう持っていました。でもこの説明には疑問があります。

 確かにスタンスを広げるとたわみが少なくなります。これは正しいと思います(スタンスとたわみの関係についてはは改めて別の機会に説明しようと考えています)。たわみが少なければ、高さが出ないというのも実感覚的に正しいと思われます。それでもなぜ疑問に思ったのか?それはエネルギー保存の法則が成り立たないと考えられるからです。

 地面を基準にして高さHから物を落とすことを考えた場合、一番高いときに位置エネルギーは最大となり、一番沈み込んだ時点で位置エネルギーは最小となります。高さHから落とす時初速は0で、落ちていく過程で受領の影響を受けて速度が上がります。速度が上がることは運動エネルギーが大きくなるということです。しかしトランポリンに着床すると速度は徐々に低下していきます。速度が低下、つまり運動エネルギーが減少した分が、トランポリンに弾性エネルギーとしてたまることになります。

 エネルギー保存の法則というのは、外部からエネルギーが加わるあるいは逃げることがなければ、形を変えてもトータルのエネルギーは変わらないという法則です。

 トランポリンに物を落とした場合を考えると、エネルギー形態は最初に説明したように、位置エネルギー、運動エネルギー、弾性エネルギーの3つが考えられます。

 つまり、位置エネルギー+運動エネルギー+弾性エネルギー=一定なのです。

 高さHからものを落とすとき、トランポリンはたわんでいませんので、弾性エネルギーは0です。そして初速は0ですので運動エネルギーも0です。そして、一番沈み込んだ時位置エネルギーは最小となります。最下点では下降から上昇に切り替わる点ですので、速度は0となりますので、やはり運動エネルギーは0となります。

 

これを式で書くと

 位置エネルギー(最大)=位置エネルギー(最少)+弾性エネルギー

となります。

 

 さて、ここで、位置エネルギーが最小時点を考えてみましょう。スタンスを広げるとたわみが少なくなり、スタンスを狭くするとたわみが多くなる。その差をDとすると、スタンスを広げると位置エネルギーがDの分増えているのです。エネルギー的に考えるとたわみが少なくなって弾性エネルギーが少なくなった分位置エネルギーが増えて、それらが相殺されていると考えればエネルギーの保存が成り立ちます。

 言い換えればたわみが少ないということは高い位置から跳び始めるということです。トランポリンの反発力が小さくなっても高い位置から跳び始めるので跳躍高さは同じになるのではと考えられるのです。

 

 以上のようにスタンスを広げることによりたわみが少なくなっても、エネルギー保存の法則からいえば、同じ高さまで上がることになると思われます。つまり、たわみが少なくなるから跳躍高さが低くなるのではないということです。

 

2019年

1月

30日

スタンスを広げると安定する

 スタンスについて、講習における跳躍高さとの関係についてもう1つ気になることが同時期にありました。それは棟朝選手を取り上げたテレビ番組です。番組で棟朝選手がスタンスを広げることに取り組んでいると報じられていました。

 トランポリンでは、難度点、演技点の他に移動減点と跳躍時間が得点となります。跳躍時間が長いほど高いジャンプをしていますので、跳躍時間が長いほど高得点となります。だから如何に高いジャンプをするかが選手にとって重要な点になります。しかし棟朝選手が取り組んでいるスタンスを広げるということは、それに反することです。なぜそうするのかというとジャンプが安定させるためだそうです。

 今回はそれについて考えてみたいと思います。

 

 話は変わりますが、昔大地震があると研究者は墓地に赴きました。別に死者を弔うためではありません。墓石の転倒具合を調べるためです。

 昔の墓石は直方体を置いただけのものです。だから地震が起きるとその形状を調べることにより地震でどのくらいの力が発生したかが推定できるからです。

 長方形の重心の高さは墓石の高さの半分の位置にあります。同様に幅の半分の位置にあります。左から力が加わった時に右下の角を回転中心にして右回りの回転が起こり、墓石は転倒するのです。しかしちょっと押しただけでは倒れません。それは重力が回転を止める方向(左回り)に働くからです。墓石の高さをH、幅をB、重さをWとすると横に押す力による回転力(回転モーメントという)はP×H/2となります。重力による抵抗力はW×B/2です。この抵抗力をP×H/2が上回った時に墓石は転倒します。つまり倒れた墓石と倒れなかった墓石を調べれば、地震による水平力が推定できるのです。

 

 上記の式より幅が大きいほど墓石は倒れにくくなります。このように幅が広くなれば転倒しにくくなる、安定するのです。わざわざ数式を用いないでも、幅が広がれば安定するというのは、常識的に知っていると思いますが、トランポリンを力学的に理解していくためには、重心とモーメントという用語は必修ですので、もっとも単純な例を用いて説明しておきました。

 

2019年

2月

07日

アルティメイト(1)ブレやすい

 ユーロ社製のトランポリンが最近アルティメイトという商品に変更になりました。このアルティメットだと従来製よりジャンプが高くなるといわれています。しかしその一方でアルティメットはブレやすいとも言われています。

これはなぜでしょうか?アルティメットを従来品と比べると脚が補強されており、チェーンがワイイヤーロープに変更されるなどの変更が行われています。

 ユーロ社の製品を見ると当初ブレースは4本でしたが、その後、後付でさらに補助ブレースを4本取り付けるようになり、やがて最初からブレースが8本になるなど、補強がなされてきました。つまり徐々にブレースの本数が多くなり剛性が高くなってきているのです。その補強がアルティメットは大幅に改善されたようです。このような変更によりチェーンのがたつき、ブレースの接続部のがたつきがなくなったことによりジャンプが安定するはずですが、選手の感覚としてはブレやすく感じるのだそうです。これは単にトランポリンの違いによる調整ミスが原因でしょうか?自分はそうではないと考えています。

 さて構造を変更するとなぜこのようになるのでしょうか?以前日本製のトランポリンと比べてユーロはしなると書きましたが、強度を高めるとこのしなりが少なくなります。しなりが少なくなるというのは、剛性が高くなり、たわみが少なくなることを意味しています。たわみが少なくなるということは、ベッドに乗っている時間短くなったと言う事意味します。つまり今までより短時間で技をかけなければならないのです。そのため、今まででは対応できた調整がより短時間で行わなければならず、ブレやすくなったのだと思います。

 

2019年

2月

12日

アルティメイト(2)トランポリンは弾性体ではない

 さて、「スタンスと跳躍高さ」では、たわみが少なくなるとジャンプが低くなるということについて書きました。アルティメットは補強がなされフレームの変形が少なくなっていることからフレームの分たわみは少なくなっているはずでありますが、選手の感覚ではむしろ高くなっているのだそうです。これは大きく矛盾することです。

 トランポリンでの跳躍はトランポリンの弾性を利用して行うといわれていますが、実はトランポリンは完全な弾性体ではないのです。そのためアルティメイトの方が従来品よりも高さが出るのではないかと思います。

 ここで、「弾性」という言葉の意味を整理しておきましょう。「弾性」とは力を加えても力を取り除くと元に戻る性質を意味しています。トランポリンの場合着床すれば体重や落下の勢いでトランポリンが変形して、離床すれば荷重が取り除かれますので元に戻ります。

 でも試合などでときどき脚を引っ張ったりして調整しているのを見かけることがあるように、ずれたりすることがあります。つまり力を取り除いても完全には元に戻っていないのです。

 剛性を高めることにより、それらが少なくなり、より完全な弾性体に近づいたため、トランポリンの弾性力が有効利用できるようになり、高さが出るようになったのではないかと思います。

 

2019年

2月

20日

鎖と鉄球

 「スタンスと跳躍高さ」からたわみと跳躍に関する話題について書いていますが、そのきっかけは日本体育協会のコーチ講習でした。その講習の中で「スタンスを広くするとたわみが少なくなり跳躍高さが減る」という説明がありましたが、それに対して、その説明ではエネルギー保存の法則が成り立たないということから一連のブログを書いています。

 その講習では、比較として同じ重さの鉄球と鎖を落とした場合の説明がありました。同じ高さから落とした場合鉄球の方が弾むというような説明でした。これは正しいと思います。なぜなら鉄球はほぼ剛体(変形しない物体)と考えられますが、鎖の塊は着床すれば変形するからです。その変形も弾性的な変形ではなく、鎖が相互に擦れある変形です。つまりそこには摩擦が生じます。鎖が高く弾まないのはエネルギー的に考えると、鎖が動くことにより位置エネルギーの一部がまず鎖の運動エネルギーになり、さらに動くことにより摩擦が発生し、熱エネルギーに変換されるからだと考えられます(日常的に体験できますが、こすると熱を持ちます)。

 

エネルギー保存の法則からいうと

  位置エネルギー(最大)=位置エネルギー(最少)+トランポリンの弾性エネルギー+摩擦による熱エネルギー

 

となります。摩擦が生じることにより位置エネルギーの一部が熱エネルギーになって消費されるため(外部に逃げるため)、上下運動に使われるエネルギーが減るため結果として跳躍高さが小さくなると考えられるのです。

 

2019年

3月

22日

アルティメイト(3)跳躍が高くなる

 もしアルティメイトの方が跳躍が高くなるのでしたら、それはなぜでしょうか?

 それは前回説明したように外部へのエネルギー逸散を少なくしたことによるものだと思います。

 例えばアルティメイトではチェーンだったものをワイヤーローブに変更しています。チェーンの場合は各部分でこすれ合うことにより摩擦が生じます。また補強がなされたことによりフレームが変形量が減っています。このため脚に付いたゴムと床面との間でのすべり、つまり摩擦が減っているのです。そのため熱エネルギーなど外部へのエネルギー逸散量が少なくなり、その分トランポリンの弾性エネルギーが大きくなって跳躍高さが高くなっているのではないかと考えられます。

 つまり、フレームを改良することにより位置エネルギーを有効に使えるよう改良されたのがアルティメイトではないかと思います。

 

2019年

3月

25日

スタンスと跳躍高さ(2)

 前回アルティメットを例にとり、エネルギーの外部逸散について説明してきました。スタンスを広げた場合も、単純にたわみが少なくなるため跳躍高さが低くなるのではなく、スタンスを広げることにより外部へのエネルギー逸散量が増えるので、跳躍高さが低くなるのではないかと考えられます。

 では、どのようなことによりエネルギーが逸散されているのでしょうか。

 その原因はいくつか考えられますが、今回は、摩擦を取り上げてみます。

 トランポリンのばねはフレームに引っ掛けてあるだけです。一般にひっぱりばねは、軸方向に力が加わった時に伸びます。軸方向に角度を持った力が加わるともろいです。パッドに落下した時にばねが変形することがよくあるのはそのためです。

 トランポリンにおいてばねはフレームへの取り付け部を支点として回転することにより軸方向にのみ力が加わるような構造になっています。そして回転することにより摩擦が生じ熱エネルギーとしてエネルギーの消費が行われるのです。

 

2019年

4月

12日

片持ち梁

 前回スタンスを広げると跳躍が低くなる原因の一つは、バネの回転などにより摩擦が大きくなるためではないかと書きましたが、スタンスを広げると摩擦量は増えるのでしょうか?それを説明するのはかなり困難ですので、それについては後日改めて書こうと思います。

 その前に今回はたわみについて考えてみます。それもトランポリンのような複雑なものではなく、もっと単純な構造のたわみです。今回考えるたわみは、片持ち梁のたわみです。

 片持ち梁というのは、板飛び込みの板のように、一方が固定されており、そこから張り出されてもう片方は何も接続していない構造です。固定されている方を固定端、先端を自由端と呼びます。

 それでは本題の片持ち梁のたわみついて説明していきます。図の矢印の点(荷重点)に力Pを加えると片持ち梁は曲線のようにたわみます。荷重点のたわみは以下の式で示されます。

 たわみδ=P×b^3÷(3×E×I)

 ここで^3は3乗を意味します。Eは材のヤング係数といわれる定数で材料によって決まる値です。Iは断面2次モーメントと呼ばれる梁の断面の形状によってきまる定数です。

 トランポリンや板飛び込みではたわますほど大きな弾性力を受けて高く跳ね上げられますので、できるだけたわみを大きくすることが大事です。()内の値は材料や形状によって自動的に決まる値ですので、選手の努力によって変えられるものではありません。選手が調整できるのは、加える力の大きさ(P)と荷重位置(b)だけです。

 式では、bを長くする、いいかえればできるだけ先端(自由端と言います)に近いほうで荷重を加えれば大きくたわますことができ、それだけ高い跳躍を受けることが出来ることになります。

2019年

4月

17日

片持ち梁(2)

 前回に続いて今回も片持ち梁についてです。

 片持ち梁を利用する競技として、板飛び込みがあります。板飛び込みでは、トランポリンのように真上に飛ぶと水面に届く前に板の上に落ちてくるはずです。板にぶつからないようにするには前方にとびだす必要があります。しかし飛び込み選手に話を聞くとあまり前方に跳ぶという意識はないのだそうです。それはなぜでしょうか、それは片持ち梁に発生するたわみの特性のためです。 

 片持ち梁の場合固定端ではたわみが生じず、また傾きも生じませんが、それ以外の部分では、たわみが発生し、それに伴い傾斜が乗じます。この荷重点における傾斜角は、以下の式となります。

 

 傾斜角θ=P×b^2÷(2×E×I)  ※図は前回参照

 

 ここでカッコ内は前回同様()内の値は材料や形状によって自動的に決まる値です。先端で飛べば跳ぶほど角度が大きくなります。板から受ける反発力は板に対して直角方向になりますので、傾斜角があるため、真上ではなく斜め上(前方側)に跳ばされることになります。そのため、前方に飛ぶようにしなくても自然に前方へも移動していくので板の上に落ちてこないのだと思われます。

 

 

 

2019年

4月

24日

トランポリンは真上に跳ぶ

 板飛び込みの構造(片持ち梁)の場合は、傾斜角があるので、ななめ上方に跳ぶと前回書きました。ではトランポリンはどうなのでしょうか?

 トランポリンもたわむことによって傾斜角が発生しますので、その角度に対して直角方向に力が働きます。でもトランポリンの場合真上にとびだします。

 トランポリンの場合は片持ち梁に喩えるのなら、向かい合わせに左右対称の片持ち梁があるような状態となります。傾斜角は生じますが、左右逆向きに同じ力が発生するため、水平方向に発生する力は打ち消し合って、差し引き0となり、上向きの力だけが発生するのです。そのためトランポリンは真上に跳び上がります。

 

2019年

5月

10日

トランポリンは真上に跳ぶ(2)

 

 

前回は片持ち梁を用いてトランポリンではなぜ真上に飛ぶかを説明しましたが、トランポリンは片持ち梁構造ではありません。むしろ両端支持の単純梁に近い構造です。両端支持梁は構造力学では図のように模式的に示されます。

 

 荷重点の傾斜角θは以下のように示されます。

   θ=-P×a×b×(a-b)÷L÷{3×E×I}

 {}内は梁の断面や材料により決まる定数です。前回トランポリンは真上に飛び上がると書きましたが、a=b=L/2のとき、上記の式からθ=0となります。反発力はたわみ角と直角の方向に発生しますので、真上に跳び上がることがわかります。

 

 

2019年

5月

14日

トランポリンは中心に向かって力が発生する

 さて前回、単純梁の傾斜角について書きましたが、前回の図のようにa≠bのときは、傾斜角が発生する(0でない)ことがわかります。 

 反発力は傾斜角に対して直角方向に発生します(図中太線矢印)。b>aの時、θは正の値(時計回り)となりますので、右斜め上に力が発生します。この力は破線矢印のように垂直方向と水平方向に分解できますので、傾斜角があるとトランポリンの弾性力の一部が水平方向に働くことになります。

 そのため、中心がからずれた地点で跳ぶと、たわみ角が発生し、自然と中央側に向かう力が発生するのです。

 

注1)この斜め上に起こる力を利用すると回転(宙返り)を掛けやすくなります。

注2)中央に向かって水平力が働くため、複数人で跳ぶと自然と中央に移動し、衝突する事故が起こりやすくなりますので、トランポリンは原則一人で利用します(指導者が補助する場合は除く)。

 

2019年

5月

30日

トランポリンは中心に向かってトラベルが起こる

 前回書いたように、中央以外のところでは傾斜角が発生し、トランポリンから受ける力には中央方向に向かう成分があります。

 トランポリン教室では、必ず1度に1人ずつ跳ぶようにしていますが、遊園地やスポッチャのようなところでは、複数の利用をしているところもあるようです。しかしこれは非常に危険です。

 冒頭に述べたように、トランポリンでは中央に向かって移動させるような力が発生しますので、徐々に中央に向かっていきます。そのためお互い離れていても徐々に近づき、衝突する危険性があります。打ち所によっては大きな事故になりますので、トランポリンは複数で用いるべきではないのです。

 

 

 

2019年

6月

07日

トラベルするのは

 さて、トランポリンは中心で跳べば真上に力を発生します。しかし初心者は最初中心で跳び始めても、徐々に移動することが多いです。その多くは前方ですが、中には後方に移動する人もいます。これはまっすぐ立っていると思っていても重心が両足の真上にないため、移動してしまうのです。

 

 下図のように重心が支店(両足)の上になければ、トランポリンから受ける力が真上に働いても、重心まわりに回転を起こす力となります。しかし実際は支点を中心に回転しますので、重心は左に倒れるように動きそのとき、重心も左に移動することになります。そのため重心がどんどん移動していきますので、トラベルしてしまうのです。

 

2019年

6月

10日

スタンスを広げるとたわみが小さくなる

 単純張りの変形について話を戻します。今まで力が加わるのは、1か所の場合について書いてきました。これを脚をピッタリ閉じて荷重点が1点とみなせる場合です。空中では両足をピッタリ閉じた方が演技点が出ますが、一般的には足を広げて着地しますので、その状態では1点集中荷重とはみなせず、荷重点は2か所となります(図参照)。つまりぴったりと脚を閉じていく場合と、脚を広げてスタンスをとる場合では構造的なモデルが変わります。

 

 その結果たわみの式が以下のように変わってきます。

 

1点集中荷重の場合(中央に着地)

  xの地点のたわみδ(x)=P×L^3×(3x/L-4x^3/L^3)÷48EI

 

2点集中荷重の場合(中央に着地)

 

a<x<L-aの範囲の

  xの地点のたわみδ(x)=pa×(3Lx-3x^2-a^2)÷6EI

 

ここで、EIは断面形状と材質で決まる定数です。

 

 

 さて、梁の中央(x=L/2)のたわみは、

 

1点集中荷重の場合、

  δ(中央)=P×L^3/48EI≒0.02008PL^3/EI

 

2点集中荷重の場合、

  δ(中央)=pa×(3L^2/4-a^2)÷12EI  

 

 なお、2点集中荷重の式にa=L/2とすると1点集中荷重の場合と同じになります。

 

 ここで仮にa=0.4Lを入れてみると、

  δ(中央)≒0.01967PL^3/EIとなり、2点集中の方がたわみが少なくなっていることがわかります。このようにスタンスを広げるとたわみが小さくなるのです。

 

2019年

6月

17日

腰落ち・背落ち・腹落ちによるたわみ

 トランポリン競技では、脚での着地以外に、腰落ち、腹落ち、背落ちがあります(バッジテストにある膝落ちやよつんばい落ちはトランポリン競技では原則使用できない)。

 これらの姿勢で着床すると跳躍高さが減ります。これについても考えておきます。

 腰落ちは多少違いますが、腹落ちや背落ち(フラットバック)は線状に重さがかかります。実際は違うかも知れませんが、線状に均等に重さwがかかる場合、数のようなモデルになります。このような荷重モデルを分布荷重といいます。

 この場合中央で最大のたわみがδ生じます。その大きさは以下のようになります

  δ=wb×(8L^3-4L・b^2+b^3)÷384EI

 

 ここでwbは体重を示しますので、1点集中荷重におけるPと等しい値となりますので、

  δ=P×(8L^3-4L・b^2+b^3)÷384EI

となります。

 

 トランポリンの幅を3m、b=1.5mとすると、δ≒0.501P/EI、前回の1点集中荷重の場合、δ≒0.542P/EIとなり、1点集中荷重の場合に比べて小さくなっていることがわかります。2点集中荷重の場合0.4Lとするとスタンスは0.2L、L=3mとすると、スランスは60cmになりこのケースは多少広すぎるかもしれませんが、このケースでは、δ≒0.531となります。このことから、足で着地する集中荷重にくらべて、分布荷重はかなりたわみが減ることがわかります。

 

2019年

6月

24日

ローラー付きトランポリン

 トランポリンの脚にはゴムがついているのが普通です。このゴムが劣化すると固くなり、滑りやすくなります。某メーカーのトランポリンは片側にゴムのかわりにローラーがついているものがあります。トランポリンの出し入れをしやすくするための特殊な構造です。トランポリンを模式的に書くと下図のようになります。

 力が加わると、ベッドがたわむだけではなく、破線のようにフレームも変形します。

 ここで摩擦の問題です。摩擦にはすべり摩擦と転がり摩擦の2種類があります。トランポリンも畳んで移動するときにはローラースタンドを利用するように、運搬器具にはタイヤやローラーがついています。これは転がり摩擦は摩擦係数が小さく摩擦抵抗が低いからです。

 下図では、左側がゴム、右側がローラーとして描いています。ローラーの方が摩擦抵抗が小さいので、大きく動きます。ここで力を抜くと、フレーム(金属)は元に戻ろうとします。ここで、左側は摩擦抵抗が大きく、右側は小さいです。そして摩擦の性質として、動いている時よりも、動き始めるまでの摩擦抵抗は大きくなります(動摩擦係数<静止摩擦係数)。そしてすべり摩擦>転がり摩擦ですので、右側のローラーの方が早く動き始めます。そのため元に戻るときに左側を支点としてローラーが左に動きやすくなります。結果として、点線のように左側に移動することがあります。

 

2019年

7月

02日

摩擦によるエネルギー逸散

 前回書いた様にトランポリンと床面との間に摩擦が発生します。またアルティメットについて書いた際に書いた様にトランポリン内でも摩擦が発生することがあります。摩擦が起こるとエネルギーの一部は熱エネルギーに変わり空気中に逸散します。

 

 つまりエネルギー保存の法則は以下のようになるのです。

 

  最高跳躍地点の位置エネルギー=最下点の位置エネルギー+トランポリンの弾性エネルギー+摩擦などにより外部に逸散するエネルギー

 

 逸散したエネルギーはトランポリンの跳躍運動に寄与しませんので、ある高さからものを落とした場合、元の位置まで戻らないのです。

 

 話をスタンスの話題に戻すと、スタンスを広げるとたわみは小さくなりますが、たわみが小さい分位置エネルギーは高くなります。もし外部とのエネルギーの出入りがなければ、スタンスの幅にかかわらず同じ高さまで戻るはずなのです。しかし実際はそうはなりません。ということはスタンスを広げることによって、外部に逸散するエネルギーの量が増えるのではないかと考えられるのです。

 では、スタンスを広げることによって大きくなるエネルギーロスの原因は何でしょうか?

 次回以降それについて検討していきたいと思います。

 

 

2019年

7月

08日

トラベルするとたわみは小さくなる

 まず、エネルギーロスの前に、トラベルとたわみについて考えてみます。

 下図のように中心からずれた時に起こる最大たわみδは、以下のようになります。

 δ=Pa×√(L^2-b^2)^3÷9√(3)EIL

 

 中心で跳ぶ場合は、a=L/2となりますので、比較のためa=L/3の場合の2つを計算してみましょう。

a=L/2(中心で跳んだ場合)

 δ=PL^3÷48EI≒0.02008PL^3/EI

 

a=L/3の場合(トラベルした場合)

 δ≒0.0179PL^3/EI

 

となります。このことからトラベルして中央以外のところに着地するとたわみが小さくなることがわかります。

 

2019年

7月

17日

トラベルするとジャンプが低くなる

 トラベルをして中心以外のところでジャンプすると跳躍高さは低くなります。でもこれはエネルギー保存の法則だけで説明できます。

 トランポリンでは跳躍のピークでは、速度は0です。そこから自由落下していきますので、高さHのところから物を落とすのと同じことになります。ピークから落下し始めると速度が生じます。速度を持つ場合、エネルギーとしては運動エネルギーを持つことになります。

 つまり、位置エネルギーの一部が運動エネルギーに変わります。言い換えれば高さが低くなった分の位置エネルギーが運動エネルギーに変わったのです。

 トランポリンに着床する寸前に速度は最大になり、着床すると徐々に減少していきます。速度の減少と高さの減少分がトランポリンの弾性エネルギーに形を変えます。そして最もたわんだとき(最下点)速度は0になり運動エネルギーは0となります。

 トランポリンから足が離れた時点で、弾性エネルギーが0になるとするとして、一連の動作を式で表すと、

 位置エネルギー(ピーク)=落下途中の位置エネルギー+上下運動エネルギー

 =位置エネルギー(最下点)+トランポリンの弾性エネルギー

 =位置エネルギー(離床時点)+上下運動エネルギー+水平運動エネルギー

 

 上記の式中にある水平運動エネルギーというのは、以前書いた様に中央で跳ばない場合は、傾斜角が生じ、水平方向への力が発生しますので、トラベルしたときに跳ね上がる際には生じます。つまり水平運動エネルギーとしてエネルギーが使われた分、上昇に使われる運動エネルギーが減り、位置エネルギーとして使われるエネルギーは位置エネルギー(離床時点)+上下運動エネルギーだけになりますので、跳躍高さは低くなるのです。