座標変換

 前回跳躍高さの基準について書きましたが、基準というのはどこにしたかをはっきりさせないと話が混乱することがよくあります。

 体操の内村選手に関する番組で、内村選手の視点からみた映像が放映されていましたが、実際は内村選手が回転しているのですが、映像では周りが回転しているものとなっています。この映像は内村選手を基準として、うつされたものだからです。

 さて、我々が住む空間は3次元と呼ばれています。3次元とは3つの軸で表現できるものです。この表現の仕方を座標系といいます。一般的に用いられる座標系は左右方向をX軸、奥行き方向をY軸、高さ方向をZ軸などとして扱うことが多いです。なお、それぞれの軸は直角で交わっています。空間のある1点は(X軸の値、Y軸の値、Z軸の値)の3つの数字で表せます。これを座標と呼びます。座標系を定義して、そこの基準からの数値(座標)を示せば、ある点の位置は説明できるのです。

 なお、3つの軸のそれぞれの基準、すなわち3つの値がすべて0になるところを「原点」

とよびます。

 一般的には床などに設置したカメラで映像を撮りますので、演技をしている選手の位置は動いています。逆に先ほど例に挙げたような撮影法をすると、周りの風景が動いているような映像となります。つまり床が動いているように見えるのです。これは座標系の基準に床を固定として扱うか、選手を基準にして扱うかの違いとなります。

 指導者が見ている選手の座標系は指導者の目線です。一般的には床は動かないものとしての座標系です。実際演技をする選手の感覚上の座標系は選手自身にあります。

 座標系という点からみると選手と指導者では異なる座標系を用いていることになります。

なお、ある座標系で表現された位置を、別の座標系で表現する場合の変換方法を、座標変換といいます。

 指導と選手は異なる座標系を用いていますので、どちらかが座標変換をしなければ、同じものを表現しても、値が異なることになりますので、話は通じないことになります。

 

 競技指導者は選手上がりが向いているといわれますが、他のスポーツと異なり、トランポリンの指導者には競技経験がない人が多くいます。競技経験のない指導者だと選手の座標系の経験がないので、座標変換がうまく行えない。競技経験のない人が競技指導をするのは難しいといわれる1つの要因が、座標変換にあるのではないか思います。