段階練習4 腰落ち3(手の向き)

 腰落ちでは腕で上体を支え、またトランポリンの反発の大部分を腕で受けますので、腕の使い方は非常に重要です。そして、腰落ちの際に一番指導されるのが手(指先)の向きです。

 手をつく時指先は横向きか斜め後ろにつくのが普通です。その方がしっかり支えられるからです。人は歩き出した時から転ぶことを経験します。転ぶことを経験するとそのうち安全に転ぶ方法を身につけます。安全に転ぶ方法を身につけた結果、指先は横や斜め後ろに向くようになりました。日常生活で経験するものですので、転ぶ時にいちいち「手をつく」と意識しなくとも、自然と手をつけるようになっています。つまり運動の自動化が行われています。

 しかしトランポリンの腰落ちは転ぶ動作ではなく、意識的に行うものです。指先を後ろに向けると肘が曲がらなくなりしっかり支えられますが、肘への負担は大きいです。また大きな力が加わった時、転ぶ時は一番守らなければならないのは、頭部です。腕を犠牲にしても頭部を守ることが重要です。しかりトランポリンの腰落ちは意識的に行うもので、ひどい失敗さえしなければ、頭部への障害の可能性は低くむしろ肘の安全性を確保することが重要です。そのため、指先を前方に向けることが必要なのですが、指先の向きは運動の自動化が起こっていますので、自動化に反する運動をする必要があります。そのため、指先の向きはかなり重点的に指導されます。

 自動化に反することを行うのは難しいことをここでは経験します。自動化と異なることをすることは神経系に対する新しい刺激となります。具体的な効果はわかりませんが、新しい刺激を与えることは、神経系の発達に影響があると考えられます。