なぜ姿勢などを細かく指導しないのか?

 反復回数のところで説明したように、エアリアルトレーニングでは反復回数に上限を設けています。これに対して競技選手指導については、反復回数に上限はないとされています。姿勢などを細かく指導するには非常に多くの反復回数が必要となります。

 ではなぜ反復回数に制限があるのでしょうか?それはエアリアルトレーニングが最も有効に働く時期が限られているからです。

 日本体操協会はスキャモンの発育・発達曲線を用いて説明しています。スキャモンの研究成果によると運動神経と関係のある神経系の期間が最も成長するのは10歳ころまでとなっています。また日本体育協会のスポーツリーダー講習テキストなどでは、10代前半に限定して現れる「即座の習得」という運動技術習得がきわめて短期間に行われる現象が現れるにはそれ以前の年代で多様性のある運動を経験しておくかなければならず、その時期に多様性のある運動経験がなければ、「即座の習得」は起きないと説明されています。

 つまり10歳ぐらいまでに多様性のある運動を経験しておくことが「即座の習得」による運動技術習得に必要であり、またスキャモンの研究成果からも運動神経向上には10歳までの運動経験が重要であるということです(他の研究でも能力習得に最適な時期があることは認められています)。

 以上の様に運動神経向上・運動技術習得のための素養づくりには10歳までに適切な運動経験を行うことが必要なのです。トランポリンエアリアルトレーニングの目的はそこにありますので、エアリアルトレーニングがもっとも効果的に働く期間は10歳までということになります。

競技選手育成の様に「美しい姿勢」「高い跳躍」「安定した跳躍」など完成度を求めていては、エアリアルトレーニングに必要な時期に必要なトレーニングをすることができなくなります。そのため、完成度は求めず安全を確保した上でできるだけ効率よく短期間でトレーニングを修了できるようにしているためです。

なお、エアリアルトレーニングはトランポリン競技者(愛好者、レクトラを含む)以外の子供を対象しています。つまり他のスポーツをするものや運動嫌いの児童を対象としています。トランポリン運動により運動神経を向上させ、それを役立てようという他のスポーツ指導者から見れば、トランポリン運動は自分のスポーツに役立つものだとしてもできるだけ早く完了してもらいたいと考えるのは自然な流れだと思います。そういう他のスポーツを目指すものにとってもできるだけ早くトレーニングを完了することは非常に重要です。だからできるだけ早くトランポリンエアリアルトレーニングを完了できるように、トランポリン競技特有の姿勢など細かい指導はしないことになっています。


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