多くの指導者は間違ったバッジテストの使い方をしている。

 日本トランポリン協会から公表されている資料「全国普及の布石は完了・次は実行(前編)」にバッジテストの目的は以下のように説明されています。

 “球技系スポーツに必要な空中感覚のトレーニングを目的とし作られた”

 

 つまりバッジテストはトランポリンというスポーツの技術を身につけるための指導法ではなく、球技系スポーツを中心としたトランポリン以外のスポーツをする子どもに対して空中感覚を身につけるためのトレーニング法として作られているのです。

 しかし現状は違います。日本トランポリン協会が公表した「子どもの指導にかかわる発想の転換」では現状について以下のように書かれています。

  “バッジテストは調整力トレーニングとしてではなく、トランポリンが好きな子供や一時的にトランポリン熱を持った子供たちのための運動処方(練習の目安・練習メニュー)となっていた。”

 

 つまり多くの指導者が本来の目的ではない、トランポリンのための練習手段としてバッジテストを利用してきたのです。多くの指導者が間違った使用法をしてきたのです。その結果として、空中で自由自在に身体をコントロールするためのトレーニング手段であるシャトルゲームが行われず、トランポリン種目の技術習得ができるバッジテストばかりがおこなわれてきたのです。

 

 前回のテーマ「バッジテストを受けても、運動神経はたいして良くならないというのは本当か?」でも書いた様に、パターン化した内容を繰り返し行う練習中心のバッジテストでは子どもの運動神経に対する寄与は少ないと考えられます。

 それについては、日本体操協会の普及指導員講習の教本では以下のように書かれています。

 “ある一定の連続パターンで覚えた35種目の空中動作のみを持って、空中で自由自在に自分の身体を操る能力が身についたとは言いにくい。”

 この記述からもわかるように、バッジテストの作成元である日本体操協会(作成当時は日本トランポリン協会)も認めていることです。

 

 多くの保護者はトランポリン選手を目指してトランポリンを始めさせるのではなく、“運動が苦手なので他のスポーツはやりたがらないがトランポリンならやれそう”とか、“トランポリンをするとバランス能力・運動神経がよくなる”という期待を込めてトランポリンをはじめさせます。このような子どもに対しては、トランポリンの技術を身につけることよりも、トランポリンを通じて運動になれること、トランポリンを利用して運動神経を向上することが重要です。そのためにトランポリンエアリアル・トレーニングはあるのですが、現状はトランポリンの技術を身につけるための手段としてトランポリン・エアリアルトレーニングの一部分であるバッジテストだけが行われています。

 本コーナーはそのような間違った使用法がされている現状を改善し、正しい利用がされるようにするために、書いてまいりました。本コーナーは次回で終わりです。

 

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