エネルギーから見たトランポリンの跳躍

2019年

1月

22日

スタンスと跳躍高さ

 日本体育協会の公認コーチ資格の講習で、「スタンスを広く捕るとたわみが少なくなり、高さが出なくなるという」という説明を受けました。一般的にそう考えられていますし、自分もかつてはそう持っていました。でもこの説明には疑問があります。

 確かにスタンスを広げるとたわみが少なくなります。これは正しいと思います(スタンスとたわみの関係についてはは改めて別の機会に説明しようと考えています)。たわみが少なければ、高さが出ないというのも実感覚的に正しいと思われます。それでもなぜ疑問に思ったのか?それはエネルギー保存の法則が成り立たないと考えられるからです。

 地面を基準にして高さHから物を落とすことを考えた場合、一番高いときに位置エネルギーは最大となり、一番沈み込んだ時点で位置エネルギーは最小となります。高さHから落とす時初速は0で、落ちていく過程で受領の影響を受けて速度が上がります。速度が上がることは運動エネルギーが大きくなるということです。しかしトランポリンに着床すると速度は徐々に低下していきます。速度が低下、つまり運動エネルギーが減少した分が、トランポリンに弾性エネルギーとしてたまることになります。

 エネルギー保存の法則というのは、外部からエネルギーが加わるあるいは逃げることがなければ、形を変えてもトータルのエネルギーは変わらないという法則です。

 トランポリンに物を落とした場合を考えると、エネルギー形態は最初に説明したように、位置エネルギー、運動エネルギー、弾性エネルギーの3つが考えられます。

 つまり、位置エネルギー+運動エネルギー+弾性エネルギー=一定なのです。

 高さHからものを落とすとき、トランポリンはたわんでいませんので、弾性エネルギーは0です。そして初速は0ですので運動エネルギーも0です。そして、一番沈み込んだ時位置エネルギーは最小となります。最下点では下降から上昇に切り替わる点ですので、速度は0となりますので、やはり運動エネルギーは0となります。

 

これを式で書くと

 位置エネルギー(最大)=位置エネルギー(最少)+弾性エネルギー

となります。

 

 さて、ここで、位置エネルギーが最小時点を考えてみましょう。スタンスを広げるとたわみが少なくなり、スタンスを狭くするとたわみが多くなる。その差をDとすると、スタンスを広げると位置エネルギーがDの分増えているのです。エネルギー的に考えるとたわみが少なくなって弾性エネルギーが少なくなった分位置エネルギーが増えて、それらが相殺されていると考えればエネルギーの保存が成り立ちます。

 言い換えればたわみが少ないということは高い位置から跳び始めるということです。トランポリンの反発力が小さくなっても高い位置から跳び始めるので跳躍高さは同じになるのではと考えられるのです。

 

 以上のようにスタンスを広げることによりたわみが少なくなっても、エネルギー保存の法則からいえば、同じ高さまで上がることになると思われます。つまり、たわみが少なくなるから跳躍高さが低くなるのではないということです。

 

2019年

1月

30日

スタンスを広げると安定する

 スタンスについて、講習における跳躍高さとの関係についてもう1つ気になることが同時期にありました。それは棟朝選手を取り上げたテレビ番組です。番組で棟朝選手がスタンスを広げることに取り組んでいると報じられていました。

 トランポリンでは、難度点、演技点の他に移動減点と跳躍時間が得点となります。跳躍時間が長いほど高いジャンプをしていますので、跳躍時間が長いほど高得点となります。だから如何に高いジャンプをするかが選手にとって重要な点になります。しかし棟朝選手が取り組んでいるスタンスを広げるということは、それに反することです。なぜそうするのかというとジャンプが安定させるためだそうです。

 今回はそれについて考えてみたいと思います。

 

 話は変わりますが、昔大地震があると研究者は墓地に赴きました。別に死者を弔うためではありません。墓石の転倒具合を調べるためです。

 昔の墓石は直方体を置いただけのものです。だから地震が起きるとその形状を調べることにより地震でどのくらいの力が発生したかが推定できるからです。

 長方形の重心の高さは墓石の高さの半分の位置にあります。同様に幅の半分の位置にあります。左から力が加わった時に右下の角を回転中心にして右回りの回転が起こり、墓石は転倒するのです。しかしちょっと押しただけでは倒れません。それは重力が回転を止める方向(左回り)に働くからです。墓石の高さをH、幅をB、重さをWとすると横に押す力による回転力(回転モーメントという)はP×H/2となります。重力による抵抗力はW×B/2です。この抵抗力をP×H/2が上回った時に墓石は転倒します。つまり倒れた墓石と倒れなかった墓石を調べれば、地震による水平力が推定できるのです。

 

 上記の式より幅が大きいほど墓石は倒れにくくなります。このように幅が広くなれば転倒しにくくなる、安定するのです。わざわざ数式を用いないでも、幅が広がれば安定するというのは、常識的に知っていると思いますが、トランポリンを力学的に理解していくためには、重心とモーメントという用語は必修ですので、もっとも単純な例を用いて説明しておきました。

 

2019年

2月

07日

アルティメイト(1)ブレやすい

 ユーロ社製のトランポリンが最近アルティメイトという商品に変更になりました。このアルティメットだと従来製よりジャンプが高くなるといわれています。しかしその一方でアルティメットはブレやすいとも言われています。

これはなぜでしょうか?アルティメットを従来品と比べると脚が補強されており、チェーンがワイイヤーロープに変更されるなどの変更が行われています。

 ユーロ社の製品を見ると当初ブレースは4本でしたが、その後、後付でさらに補助ブレースを4本取り付けるようになり、やがて最初からブレースが8本になるなど、補強がなされてきました。つまり徐々にブレースの本数が多くなり剛性が高くなってきているのです。その補強がアルティメットは大幅に改善されたようです。このような変更によりチェーンのがたつき、ブレースの接続部のがたつきがなくなったことによりジャンプが安定するはずですが、選手の感覚としてはブレやすく感じるのだそうです。これは単にトランポリンの違いによる調整ミスが原因でしょうか?自分はそうではないと考えています。

 さて構造を変更するとなぜこのようになるのでしょうか?以前日本製のトランポリンと比べてユーロはしなると書きましたが、強度を高めるとこのしなりが少なくなります。しなりが少なくなるというのは、剛性が高くなり、たわみが少なくなることを意味しています。たわみが少なくなるということは、ベッドに乗っている時間短くなったと言う事意味します。つまり今までより短時間で技をかけなければならないのです。そのため、今まででは対応できた調整がより短時間で行わなければならず、ブレやすくなったのだと思います。

 

2019年

2月

12日

アルティメイト(2)トランポリンは弾性体ではない

 さて、「スタンスと跳躍高さ」では、たわみが少なくなるとジャンプが低くなるということについて書きました。アルティメットは補強がなされフレームの変形が少なくなっていることからフレームの分たわみは少なくなっているはずでありますが、選手の感覚ではむしろ高くなっているのだそうです。これは大きく矛盾することです。

 トランポリンでの跳躍はトランポリンの弾性を利用して行うといわれていますが、実はトランポリンは完全な弾性体ではないのです。そのためアルティメイトの方が従来品よりも高さが出るのではないかと思います。

 ここで、「弾性」という言葉の意味を整理しておきましょう。「弾性」とは力を加えても力を取り除くと元に戻る性質を意味しています。トランポリンの場合着床すれば体重や落下の勢いでトランポリンが変形して、離床すれば荷重が取り除かれますので元に戻ります。

 でも試合などでときどき脚を引っ張ったりして調整しているのを見かけることがあるように、ずれたりすることがあります。つまり力を取り除いても完全には元に戻っていないのです。

 剛性を高めることにより、それらが少なくなり、より完全な弾性体に近づいたため、トランポリンの弾性力が有効利用できるようになり、高さが出るようになったのではないかと思います。

 

2019年

2月

20日

鎖と鉄球

 「スタンスと跳躍高さ」からたわみと跳躍に関する話題について書いていますが、そのきっかけは日本体育協会のコーチ講習でした。その講習の中で「スタンスを広くするとたわみが少なくなり跳躍高さが減る」という説明がありましたが、それに対して、その説明ではエネルギー保存の法則が成り立たないということから一連のブログを書いています。

 その講習では、比較として同じ重さの鉄球と鎖を落とした場合の説明がありました。同じ高さから落とした場合鉄球の方が弾むというような説明でした。これは正しいと思います。なぜなら鉄球はほぼ剛体(変形しない物体)と考えられますが、鎖の塊は着床すれば変形するからです。その変形も弾性的な変形ではなく、鎖が相互に擦れある変形です。つまりそこには摩擦が生じます。鎖が高く弾まないのはエネルギー的に考えると、鎖が動くことにより位置エネルギーの一部がまず鎖の運動エネルギーになり、さらに動くことにより摩擦が発生し、熱エネルギーに変換されるからだと考えられます(日常的に体験できますが、こすると熱を持ちます)。

 

エネルギー保存の法則からいうと

  位置エネルギー(最大)=位置エネルギー(最少)+トランポリンの弾性エネルギー+摩擦による熱エネルギー

 

となります。摩擦が生じることにより位置エネルギーの一部が熱エネルギーになって消費されるため(外部に逃げるため)、上下運動に使われるエネルギーが減るため結果として跳躍高さが小さくなると考えられるのです。

 

2019年

3月

22日

アルティメイト(3)跳躍が高くなる

 もしアルティメイトの方が跳躍が高くなるのでしたら、それはなぜでしょうか?

 それは前回説明したように外部へのエネルギー逸散を少なくしたことによるものだと思います。

 例えばアルティメイトではチェーンだったものをワイヤーローブに変更しています。チェーンの場合は各部分でこすれ合うことにより摩擦が生じます。また補強がなされたことによりフレームが変形量が減っています。このため脚に付いたゴムと床面との間でのすべり、つまり摩擦が減っているのです。そのため熱エネルギーなど外部へのエネルギー逸散量が少なくなり、その分トランポリンの弾性エネルギーが大きくなって跳躍高さが高くなっているのではないかと考えられます。

 つまり、フレームを改良することにより位置エネルギーを有効に使えるよう改良されたのがアルティメイトではないかと思います。

 

2019年

3月

25日

スタンスと跳躍高さ(2)

 前回アルティメットを例にとり、エネルギーの外部逸散について説明してきました。スタンスを広げた場合も、単純にたわみが少なくなるため跳躍高さが低くなるのではなく、スタンスを広げることにより外部へのエネルギー逸散量が増えるので、跳躍高さが低くなるのではないかと考えられます。

 では、どのようなことによりエネルギーが逸散されているのでしょうか。

 その原因はいくつか考えられますが、今回は、摩擦を取り上げてみます。

 トランポリンのばねはフレームに引っ掛けてあるだけです。一般にひっぱりばねは、軸方向に力が加わった時に伸びます。軸方向に角度を持った力が加わるともろいです。パッドに落下した時にばねが変形することがよくあるのはそのためです。

 トランポリンにおいてばねはフレームへの取り付け部を支点として回転することにより軸方向にのみ力が加わるような構造になっています。そして回転することにより摩擦が生じ熱エネルギーとしてエネルギーの消費が行われるのです。

 

2019年

4月

12日

片持ち梁

 前回スタンスを広げると跳躍が低くなる原因の一つは、バネの回転などにより摩擦が大きくなるためではないかと書きましたが、スタンスを広げると摩擦量は増えるのでしょうか?それを説明するのはかなり困難ですので、それについては後日改めて書こうと思います。

 その前に今回はたわみについて考えてみます。それもトランポリンのような複雑なものではなく、もっと単純な構造のたわみです。今回考えるたわみは、片持ち梁のたわみです。

 片持ち梁というのは、板飛び込みの板のように、一方が固定されており、そこから張り出されてもう片方は何も接続していない構造です。固定されている方を固定端、先端を自由端と呼びます。

 それでは本題の片持ち梁のたわみついて説明していきます。図の矢印の点(荷重点)に力Pを加えると片持ち梁は曲線のようにたわみます。荷重点のたわみは以下の式で示されます。

 たわみδ=P×b^3÷(3×E×I)

 ここで^3は3乗を意味します。Eは材のヤング係数といわれる定数で材料によって決まる値です。Iは断面2次モーメントと呼ばれる梁の断面の形状によってきまる定数です。

 トランポリンや板飛び込みではたわますほど大きな弾性力を受けて高く跳ね上げられますので、できるだけたわみを大きくすることが大事です。()内の値は材料や形状によって自動的に決まる値ですので、選手の努力によって変えられるものではありません。選手が調整できるのは、加える力の大きさ(P)と荷重位置(b)だけです。

 式では、bを長くする、いいかえればできるだけ先端(自由端と言います)に近いほうで荷重を加えれば大きくたわますことができ、それだけ高い跳躍を受けることが出来ることになります。

2019年

4月

17日

片持ち梁(2)

 前回に続いて今回も片持ち梁についてです。

 片持ち梁を利用する競技として、板飛び込みがあります。板飛び込みでは、トランポリンのように真上に飛ぶと水面に届く前に板の上に落ちてくるはずです。板にぶつからないようにするには前方にとびだす必要があります。しかし飛び込み選手に話を聞くとあまり前方に跳ぶという意識はないのだそうです。それはなぜでしょうか、それは片持ち梁に発生するたわみの特性のためです。 

 片持ち梁の場合固定端ではたわみが生じず、また傾きも生じませんが、それ以外の部分では、たわみが発生し、それに伴い傾斜が乗じます。この荷重点における傾斜角は、以下の式となります。

 

 傾斜角θ=P×b^2÷(2×E×I)  ※図は前回参照

 

 ここでカッコ内は前回同様()内の値は材料や形状によって自動的に決まる値です。先端で飛べば跳ぶほど角度が大きくなります。板から受ける反発力は板に対して直角方向になりますので、傾斜角があるため、真上ではなく斜め上(前方側)に跳ばされることになります。そのため、前方に飛ぶようにしなくても自然に前方へも移動していくので板の上に落ちてこないのだと思われます。

 

 

 

2019年

4月

24日

トランポリンは真上に跳ぶ

 板飛び込みの構造(片持ち梁)の場合は、傾斜角があるので、ななめ上方に跳ぶと前回書きました。ではトランポリンはどうなのでしょうか?

 トランポリンもたわむことによって傾斜角が発生しますので、その角度に対して直角方向に力が働きます。でもトランポリンの場合真上にとびだします。

 トランポリンの場合は片持ち梁に喩えるのなら、向かい合わせに左右対称の片持ち梁があるような状態となります。傾斜角は生じますが、左右逆向きに同じ力が発生するため、水平方向に発生する力は打ち消し合って、差し引き0となり、上向きの力だけが発生するのです。そのためトランポリンは真上に跳び上がります。

 

2019年

5月

10日

トランポリンは真上に跳ぶ(2)

 

 

前回は片持ち梁を用いてトランポリンではなぜ真上に飛ぶかを説明しましたが、トランポリンは片持ち梁構造ではありません。むしろ両端支持の単純梁に近い構造です。両端支持梁は構造力学では図のように模式的に示されます。

 

 荷重点の傾斜角θは以下のように示されます。

   θ=-P×a×b×(a-b)÷L÷{3×E×I}

 {}内は梁の断面や材料により決まる定数です。前回トランポリンは真上に飛び上がると書きましたが、a=b=L/2のとき、上記の式からθ=0となります。反発力はたわみ角と直角の方向に発生しますので、真上に跳び上がることがわかります。

 

 

2019年

5月

14日

トランポリンは中心に向かって力が発生する

 さて前回、単純梁の傾斜角について書きましたが、前回の図のようにa≠bのときは、傾斜角が発生する(0でない)ことがわかります。 

 反発力は傾斜角に対して直角方向に発生します(図中太線矢印)。b>aの時、θは正の値(時計回り)となりますので、右斜め上に力が発生します。この力は破線矢印のように垂直方向と水平方向に分解できますので、傾斜角があるとトランポリンの弾性力の一部が水平方向に働くことになります。

 そのため、中心がからずれた地点で跳ぶと、たわみ角が発生し、自然と中央側に向かう力が発生するのです。

 

注1)この斜め上に起こる力を利用すると回転(宙返り)を掛けやすくなります。

注2)中央に向かって水平力が働くため、複数人で跳ぶと自然と中央に移動し、衝突する事故が起こりやすくなりますので、トランポリンは原則一人で利用します(指導者が補助する場合は除く)。

 

2019年

5月

30日

トランポリンは中心に向かってトラベルが起こる

 前回書いたように、中央以外のところでは傾斜角が発生し、トランポリンから受ける力には中央方向に向かう成分があります。

 トランポリン教室では、必ず1度に1人ずつ跳ぶようにしていますが、遊園地やスポッチャのようなところでは、複数の利用をしているところもあるようです。しかしこれは非常に危険です。

 冒頭に述べたように、トランポリンでは中央に向かって移動させるような力が発生しますので、徐々に中央に向かっていきます。そのためお互い離れていても徐々に近づき、衝突する危険性があります。打ち所によっては大きな事故になりますので、トランポリンは複数で用いるべきではないのです。

 

 

 

2019年

6月

07日

トラベルするのは

 さて、トランポリンは中心で跳べば真上に力を発生します。しかし初心者は最初中心で跳び始めても、徐々に移動することが多いです。その多くは前方ですが、中には後方に移動する人もいます。これはまっすぐ立っていると思っていても重心が両足の真上にないため、移動してしまうのです。

 

 下図のように重心が支店(両足)の上になければ、トランポリンから受ける力が真上に働いても、重心まわりに回転を起こす力となります。しかし実際は支点を中心に回転しますので、重心は左に倒れるように動きそのとき、重心も左に移動することになります。そのため重心がどんどん移動していきますので、トラベルしてしまうのです。

 

2019年

6月

10日

スタンスを広げるとたわみが小さくなる

 単純張りの変形について話を戻します。今まで力が加わるのは、1か所の場合について書いてきました。これを脚をピッタリ閉じて荷重点が1点とみなせる場合です。空中では両足をピッタリ閉じた方が演技点が出ますが、一般的には足を広げて着地しますので、その状態では1点集中荷重とはみなせず、荷重点は2か所となります(図参照)。つまりぴったりと脚を閉じていく場合と、脚を広げてスタンスをとる場合では構造的なモデルが変わります。

 

 その結果たわみの式が以下のように変わってきます。

 

1点集中荷重の場合(中央に着地)

  xの地点のたわみδ(x)=P×L^3×(3x/L-4x^3/L^3)÷48EI

 

2点集中荷重の場合(中央に着地)

 

a<x<L-aの範囲の

  xの地点のたわみδ(x)=pa×(3Lx-3x^2-a^2)÷6EI

 

ここで、EIは断面形状と材質で決まる定数です。

 

 

 さて、梁の中央(x=L/2)のたわみは、

 

1点集中荷重の場合、

  δ(中央)=P×L^3/48EI≒0.02008PL^3/EI

 

2点集中荷重の場合、

  δ(中央)=pa×(3L^2/4-a^2)÷12EI  

 

 なお、2点集中荷重の式にa=L/2とすると1点集中荷重の場合と同じになります。

 

 ここで仮にa=0.4Lを入れてみると、

  δ(中央)≒0.01967PL^3/EIとなり、2点集中の方がたわみが少なくなっていることがわかります。このようにスタンスを広げるとたわみが小さくなるのです。

 

2019年

6月

17日

腰落ち・背落ち・腹落ちによるたわみ

 トランポリン競技では、脚での着地以外に、腰落ち、腹落ち、背落ちがあります(バッジテストにある膝落ちやよつんばい落ちはトランポリン競技では原則使用できない)。

 これらの姿勢で着床すると跳躍高さが減ります。これについても考えておきます。

 腰落ちは多少違いますが、腹落ちや背落ち(フラットバック)は線状に重さがかかります。実際は違うかも知れませんが、線状に均等に重さwがかかる場合、数のようなモデルになります。このような荷重モデルを分布荷重といいます。

 この場合中央で最大のたわみがδ生じます。その大きさは以下のようになります

  δ=wb×(8L^3-4L・b^2+b^3)÷384EI

 

 ここでwbは体重を示しますので、1点集中荷重におけるPと等しい値となりますので、

  δ=P×(8L^3-4L・b^2+b^3)÷384EI

となります。

 

 トランポリンの幅を3m、b=1.5mとすると、δ≒0.501P/EI、前回の1点集中荷重の場合、δ≒0.542P/EIとなり、1点集中荷重の場合に比べて小さくなっていることがわかります。2点集中荷重の場合0.4Lとするとスタンスは0.2L、L=3mとすると、スランスは60cmになりこのケースは多少広すぎるかもしれませんが、このケースでは、δ≒0.531となります。このことから、足で着地する集中荷重にくらべて、分布荷重はかなりたわみが減ることがわかります。

 

2019年

6月

24日

ローラー付きトランポリン

 トランポリンの脚にはゴムがついているのが普通です。このゴムが劣化すると固くなり、滑りやすくなります。某メーカーのトランポリンは片側にゴムのかわりにローラーがついているものがあります。トランポリンの出し入れをしやすくするための特殊な構造です。トランポリンを模式的に書くと下図のようになります。

 力が加わると、ベッドがたわむだけではなく、破線のようにフレームも変形します。

 ここで摩擦の問題です。摩擦にはすべり摩擦と転がり摩擦の2種類があります。トランポリンも畳んで移動するときにはローラースタンドを利用するように、運搬器具にはタイヤやローラーがついています。これは転がり摩擦は摩擦係数が小さく摩擦抵抗が低いからです。

 下図では、左側がゴム、右側がローラーとして描いています。ローラーの方が摩擦抵抗が小さいので、大きく動きます。ここで力を抜くと、フレーム(金属)は元に戻ろうとします。ここで、左側は摩擦抵抗が大きく、右側は小さいです。そして摩擦の性質として、動いている時よりも、動き始めるまでの摩擦抵抗は大きくなります(動摩擦係数<静止摩擦係数)。そしてすべり摩擦>転がり摩擦ですので、右側のローラーの方が早く動き始めます。そのため元に戻るときに左側を支点としてローラーが左に動きやすくなります。結果として、点線のように左側に移動することがあります。

 

2019年

7月

02日

摩擦によるエネルギー逸散

 前回書いた様にトランポリンと床面との間に摩擦が発生します。またアルティメットについて書いた際に書いた様にトランポリン内でも摩擦が発生することがあります。摩擦が起こるとエネルギーの一部は熱エネルギーに変わり空気中に逸散します。

 

 つまりエネルギー保存の法則は以下のようになるのです。

 

  最高跳躍地点の位置エネルギー=最下点の位置エネルギー+トランポリンの弾性エネルギー+摩擦などにより外部に逸散するエネルギー

 

 逸散したエネルギーはトランポリンの跳躍運動に寄与しませんので、ある高さからものを落とした場合、元の位置まで戻らないのです。

 

 話をスタンスの話題に戻すと、スタンスを広げるとたわみは小さくなりますが、たわみが小さい分位置エネルギーは高くなります。もし外部とのエネルギーの出入りがなければ、スタンスの幅にかかわらず同じ高さまで戻るはずなのです。しかし実際はそうはなりません。ということはスタンスを広げることによって、外部に逸散するエネルギーの量が増えるのではないかと考えられるのです。

 では、スタンスを広げることによって大きくなるエネルギーロスの原因は何でしょうか?

 次回以降それについて検討していきたいと思います。

 

 

2019年

7月

08日

トラベルするとたわみは小さくなる

 まず、エネルギーロスの前に、トラベルとたわみについて考えてみます。

 下図のように中心からずれた時に起こる最大たわみδは、以下のようになります。

 δ=Pa×√(L^2-b^2)^3÷9√(3)EIL

 

 中心で跳ぶ場合は、a=L/2となりますので、比較のためa=L/3の場合の2つを計算してみましょう。

a=L/2(中心で跳んだ場合)

 δ=PL^3÷48EI≒0.02008PL^3/EI

 

a=L/3の場合(トラベルした場合)

 δ≒0.0179PL^3/EI

 

となります。このことからトラベルして中央以外のところに着地するとたわみが小さくなることがわかります。

 

2019年

7月

17日

トラベルするとジャンプが低くなる

 トラベルをして中心以外のところでジャンプすると跳躍高さは低くなります。でもこれはエネルギー保存の法則だけで説明できます。

 トランポリンでは跳躍のピークでは、速度は0です。そこから自由落下していきますので、高さHのところから物を落とすのと同じことになります。ピークから落下し始めると速度が生じます。速度を持つ場合、エネルギーとしては運動エネルギーを持つことになります。

 つまり、位置エネルギーの一部が運動エネルギーに変わります。言い換えれば高さが低くなった分の位置エネルギーが運動エネルギーに変わったのです。

 トランポリンに着床する寸前に速度は最大になり、着床すると徐々に減少していきます。速度の減少と高さの減少分がトランポリンの弾性エネルギーに形を変えます。そして最もたわんだとき(最下点)速度は0になり運動エネルギーは0となります。

 トランポリンから足が離れた時点で、弾性エネルギーが0になるとするとして、一連の動作を式で表すと、

 位置エネルギー(ピーク)=落下途中の位置エネルギー+上下運動エネルギー

 =位置エネルギー(最下点)+トランポリンの弾性エネルギー

 =位置エネルギー(離床時点)+上下運動エネルギー+水平運動エネルギー

 

 上記の式中にある水平運動エネルギーというのは、以前書いた様に中央で跳ばない場合は、傾斜角が生じ、水平方向への力が発生しますので、トラベルしたときに跳ね上がる際には生じます。つまり水平運動エネルギーとしてエネルギーが使われた分、上昇に使われる運動エネルギーが減り、位置エネルギーとして使われるエネルギーは位置エネルギー(離床時点)+上下運動エネルギーだけになりますので、跳躍高さは低くなるのです。

 

2019年

9月

04日

バネの回転(1)

 トランポリンは基本的にばねとベッドの弾性を利用した跳躍器具です。今まで単純支持梁などを利用して、説明してきましたが、実際はフレームの変形は無視できるものとしてもばねとベッドの2つの部材で構成されていますので、単純梁ではありません。

 トランポリンで高い跳躍をするには以下にトランポリンを「たわませる」かがカギとなりますが、部材レベルでみるとたわませるのではありません。特にばねは軸方向に伸びるだけで、軸に対して横方向に力が加わると破損することがあります。

 実際トラベルしてパッドの上に着地したりすると、ばねが折れたり、変形して元に戻らなくなることがあります。

 トランポリンでは、バネの両端はフックで引っ掛けているだけで、自由に回転できるような構造となっています。回転することによりベッドから加えられる力が軸方向になるようにしてあるのです。

 

2019年

9月

10日

バネの回転(2)

 前回書いた様にばねは回転することにより軸方向以外の力が加わらないようになっています。

「トラベルするとたわみは小さくなる」で計算した結果をもう一度引用します。

 

a=L/2(中心で跳んだ場合)

 δ=PL^3÷48EI≒0.02008PL^3/EI

 

a=L/3の場合(トラベルした場合)

 δ≒0.0179PL^3/EI

 

です。

 トランポリンの中心で跳んだ方が、たわみが大きくなります。

 この値を参考にして、ばねの回転を考えてみます。ばねは軸方向以外に力が加わらないように回転しますので、おおよそばねの向きは下図のθの角度になります。

 

 tan(θ)=δ/aです。

 

以上より、

a=L/2(中心で跳んだ場合)

 tan(θ)≒0.04016PL^2/EIです

 

a=L/3の場合(トラベルした場合)

 tan(θ)≒0.0537PL^2/EI

 

 以上から回転角θは、中心で跳んだ場合より、端で跳んだ方が大きくなることがわかります。

 

 ところでトランポリンのばねは回転しますので、古いトランポリンなどでは、フレームのばねと取付け部がすり減ってきます。すり減るのはそこに大きな摩擦がかかっているためです。摩擦が生じれば運動エネルギーの一部が熱エネルギーとして逸散します。

 トラベルすると回転量が増えるということは、それだけ摩擦によるエネルギーの消費が起こりますので、トラベルをすると跳躍に活かせないエネルギーが増加することになり、ジャンプが低くなります。

 つまりトラベルすると水平方向への移動と摩擦によるエネルギーの消失という2つの無駄が起こるためジャンプが低くなるといえます。

 

 ただし、スタンスを広げた場合は、これは当てはまりません。スタンスを広げた場合は、中央で跳んでいれば、傾斜角による水平力は相殺され発生しませんし、両脚に均等に力がかかっているので、片側にかかる力は半分になります。そのためたわみが半分になりますので、回転による摩擦も少なくなりますので。

 

 

2019年

10月

02日

スポッターマット

 トランポリンでは不安定な姿勢で着地した際、コーチなどがスポッターマットと呼ばれるマットを投げ入れます。スポッターマットが変形してトランポリンの弾性力を緩衝することにより怪我を防ぎます。

 言い換えればトランポリンと人体の間にクッション材を入れることにより、クッション材が変形して、エネルギーを奪うことにより、トランポリンの弾性エネルギーの伝達効率を下げているのです。

 

2019年

10月

09日

腹落ち・背落ち・腰落ち(2)

 自分の教室ではコンクリートの床に直にトランポリンを置いています。そのため冬になるとトランポリンの真下の床から冷気が上がってきます。それを防ぐために断熱材として発泡スチロールを敷いています。以前はもっと厚く敷いていたのですが、現在は厚さを減らしています。

 というのは、以前大柄な体格の良い男性成人が腰落ちをしたときに、床に触れてしまったからです。発泡スチロールでしたので幸いけがはありませんでしたが。だから今は薄くしています。

 

 公共体育館で活動する団体ではローラースタンドはトランポリン利用中は使用しませんので、どこかに置いておく必要があります。床においておくとつまずいたりすることもありますので、邪魔にならない場所としてトランポリンの下に置くことがあります。体重のある大学生が背落ちをしたらそのローラースタンドにぶつかったということもありました。

 

 これらは足で跳んでいるときに起きておらず、背落ちや腹落ちの際に起きています。つまり、背落ちや腰落ちは足で跳んでいる時よりも大きくたわむことがあるのです。

 以前背落ちなど等分布荷重とみなせる状態ではたわみが小さくなると書きましたが、それと反対のことが起きているのです。

 

 今回はそれについてエネルギー的に考えていきたいと思います。

 人間のからだを長方形とみなしてみます。左が立っている状態、右が背落ちのように寝た状態を示しています。

 長方形の重心(正確には図心)は対角線の交点、つまり中央にあります。立った状態より寝た状態では重心位置がdだけ低くなっています。

 重心位置が低いということは位置エネルギーが低くなっていることを意味します。

 位置エネルギーは高さに比例します。トランポリンから測って高さHのところから物を落とした時、立って着床した際に失われた位置エネルギーはmg(H-a/2)となります。

 寝た状態で着床した場合はmg(H-b/2)となります。なお、mg=体重Wです。

  その差はW(a/2-b・2)=Wdとなります。

  つまり寝た状態では立位に比べてWd分だけ位置エネルギーを利用することが出来、その分トランポリンの弾性エネルギーが増えるのです。その結果背落ちなどではたわみが大きくなるのです。

 

2019年

10月

17日

腹落ち・背落ち・腰落ち(3)

 前回書いた様に、背落ちなどでは重心位置が低くなることから位置エネルギーが有効に使えるため、より大きな力でトランポリンを大きくたわますことが出来ます。

 スタンスを広げるとたわみが小さくなるのでジャンプが低くなる、つまりたわみに応じて跳躍高さが変わるのだとしたら、背落ちなどの方がフィートバウンスより高い跳躍ができるはずです。でも、実際はそうはなりません。

 これはTスコアが行われる以前の競技規定でも示されています。Tスコア採用以前は演技審が高さの減少を採点することになっており、2009-2012年版ではフィートバウンス(足での着地)では1/4高さが減少すると0.1点減点ですが、背落ちなどでは1/4では減点がなく、半分で減点となっています。つまり背落ちなどは高さが減るのは当然なので、それを反映した採点法となっていたのです。

 現在の採点法は着床姿勢にかかわらず、滞空時間を機械計測しているだけですので、このような配慮はありませんが。

 話を元に戻しますが、背落ちなどではフィートバウンスよりたわみが大きくなることはありますが、跳躍高さは低くなるのが普通なのです。つまり沈み込み量が増えても跳躍高さが高くなるとは限らないのです。言い換えれば沈み込み量が減っても跳躍高さが減るとは限らないのです。よってスタンスを広げると高さが低くなるということに対して、たわみ量だけでは説明がつかないのです。

 

 

 

2019年

10月

23日

腹落ち・背落ち・腰落ち(4)

 前回に引き続き、背落ちなどで着床すると高さが低くなることについて書いていきます。今回はその理由についてです。

 さて、腹落ち・背落ち・腰落ちなどは以前書いた様に、分布荷重とみなせます。その際には点線のように下向きに凸のたわみが生じます。もし真っ直ぐな姿勢を保てれば、太線のようになるはずです。ベッドと接しているのは両端のみとなります。これは人体が単純支持の梁としてモデル化できることを意味します。そのため落下の勢いや自重がかかり人体も下向きにたわみます。

 実際これらの姿勢で着床した時全体的にベッドに接しており、中央が浮いていることはありません。このことは人体が直線的な姿勢を維持できず、変形していることを意味します。

 これらの姿勢で着床したときは足で着地した場合より、跳躍高さが低くなりますが、体が変形することにより、1種の緩衝作用が働き、跳躍高さが高くなるものと思われます。

 

 エネルギー的に考えると

 

 最高点の位置エネルギー=最下点の位置エネルギー+トランポリンの弾性エネルギー+人体の変形エネルギー

 

となり、位置エネルギーの一部が人体の変形エネルギーとして無駄に使われるため、エネルギーロスが生じて、跳躍高さが低くなるのではないかと考えられます。

 

2019年

10月

28日

スタンスを考える

 人間の骨盤は幅を持っていますので、下図のように足を閉じすぎても広すぎても脚は垂直になりません。脚が垂直になっている時、かかる力は軸方向だけですが、脚が角度を持つと、軸方向に加えて軸と直角方向にも力が加わります。

 脚は骨盤を端部としてみれば、以前紹介した片持ち梁のような構造になっています。

 

 だいぶ前に「白樺のポーズ」について書きましたが、白樺のポーズはエネルギー伝達効率のよい姿勢です。それは身体の変形を最小に抑える姿勢ですが、脚が傾きを持つと片持ち梁のようにたわみが生じて、その分エネルギー伝達が悪くなります。

 エネルギー保存の法則からいうと、

  トランポリンの弾性エネルギー=上下方向運動エネルギー+脚の変形エネルギー

  となります。この変形エネルギーが弾性エネルギーとして利用できればエネルギーは保存されるのですが、その多くは体内で吸収されてしまうので、跳躍に活かすことが出来ないのではないかと思われます。これは以前書いたスポッターマットを使用した場合と同じことです。言い換えれば脚の変形がスポッターマットの役割をしているのです。

 そして脚の傾きの角度が大きければ大きいほど、脚の軸に対する直交成分が大きくなり、変形が大きくなります。

 

 以上のことからスタンスを広げると、単純にトランポリンのたわみが小さくなるため跳躍が低くなるのではなく、脚の変形によるエネルギー逸散が生じ、エネルギー伝達効率が悪くなるため、跳躍高さが低くなるのではないかと考えます。

 

2019年

11月

12日

空気抵抗

 以前、現在のトランポリンはマジックテープやベルトでパッドを止めていますが、大昔のレギュレーショントランポリンではパッドの取り付けが金具でした。カパッとフレームにはめて取り付けるようになっていたのです。この金具が劣化してパッドがすぐ外れるようになったので、パッドを買い替えたら急にトランポリンが固くなりました。今までのパッドはフレーム部分を覆うものだったのですが、最近のものはばね部分も覆うものになっていたのです。

 古いトランポリンのベッドは現在競技で使われているものと同じくテープベッドですが、昔は1本の太さが1インチぐらいの幅があります。現在のトランポリンは子どもの指が入ってしまうぐらい隙間がありますが、昔のベッドはほとんど隙間がない構造になっていました。そのため空気が通りにくい構造となっていました。パッドが狭いときはばねの位置から空気が抜けていましたが、そこから抜けることが出来なくなった分空気抵抗が大きくなり、硬く感じられるようになったのです。

 同様に埋め込み式のトランポリンは、空気が横から抜けにくくなるため硬くなるようです。

 

 以上のようにトランポリンのベッドは空気抵抗を受けます。空気抵抗があるとエネルギーロスとなりますので、その文跳躍が低くなります。だからできるだけ空気抵抗を少なくするために、現在のテープベッドでは隙間が大きくなっています。

 

2019年

11月

18日

自由振動

 トランポリンから離床すると、普通プレイヤーに注目が集まります。そのため離床後のトランポリンを観察したことは少ないと思いますが、トランポリンから足が離れた時にトランポリンのベッドは停止するのではなく、無人の状態でベッドは振動し続けます。空気抵抗や摩擦があるので、エネルギーを失って徐々に振動は小さくなっていきますが。

 ベッドが動くということはベッドが運動エネルギーを持つことを意味しています。つまり、トランポリンの弾性エネルギーの一部が跳躍に使われず、ベッドの振動(運動)エネルギーとして逸散しているのです。

 加力の位置や方法により振動の形態(振動のモード)は変わりますので、もしかしたらスタンスを広げることにより、ベッドの振動エネルギーに変化があるのかもしれません。この問題はかなり解明が難しいのでこれ以上触れませんが。

 

 

 

2019年

11月

25日

同じ高さで跳べるのは

 前回書いたように、トランポリンでは空気抵抗が生じますし、バネの接続部などフレームなどで発生する摩擦によりエネルギーのロスが生じます。さらにベッドの振動によるエネルギー逸散があります。

 だから、連続跳躍をすると徐々に高さが低くなるはずです。でも実際はそうはなりません。それは外部からエネルギーの追加があるからです。ここで外部からというのは、トランポリンをする人から加えられるものを意味しています。

 一般にトランポリンではただ単に落下するのではなく、足首や膝・腰の曲げ伸ばしなどによりベッドを押しています。エネルギー的にみるとこれが外部からのエネルギー供給ということになるのです。

 

2019年

12月

02日

ピン構造

 「スタンスを考える」では脚を梁に見たてて、スタンスを広げるとベッドに対して垂直でないため、脚がたわむことによりエネルギーロスが生じ、その結果跳躍高さが低くなると書きました。

 

 でも脚はたわむだけではありません。脚は股関節とひざ部分が回転できる構造(ピン構造という)になっています。そのため脚がたわまなくても回転が生じてその分エネルギーロスが生じます。その分だけ跳躍高さが低くなるのではないかと思います。

 

2019年

12月

09日

踏み

 「同じ高さで跳べるのは」では、摩擦や空気抵抗などのエネルギーロスがある一方、トランポリンをする人からエネルギー供給があることを説明しました。

 前回の「ピン構造」では、スタンスを広げることにより脚に曲げや回転がかかりそのためエネルギーロスが生じて跳躍高さが減ると書きました。

 一般に筋肉は関節(ピン構造)をまたいでつながっており、拮抗する筋肉の一方を縮めることにより関節を回転させたり、拮抗筋両方を縮めることにより関節を固定したりします。

スタンスを広げると、膝や股関節に回転力が生じますので、それを固定・あるいは最小限に防ぐために筋肉が使われます。つまり、本来跳躍に使うための筋力が、関節を維持・固定するために使われることになるのです。その分供給するエネルギーが減ることも跳躍高さを低くする原因ではないかと思います。

なお、ここではスタンスを広げるとしていますが、スタンスを狭めても脚の角度は垂直になりませんので、同様に小さくなるのではないかと思います。つまり、最適なスタンス幅が存在するのではないかということです。そしてそれは個々人の骨盤の大きさなど身体構造により決まってくるのではないかと考えています。

 

 

 

2019年

12月

17日

片足着地

 片足着地は不安定ですので、トランポリンでは片足で着地した場合、種目の失敗として扱われます。だからバランスを崩したなど技を失敗した時以外、片足で着地することはないと思います。

 だから、試してみることはできませんが、もし片足着地をした場合を考えてみます。

 片足で着地するということは、スタンスを極限まで狭めた状態となります。そのためたわみは大きくなります。しかし、もしそのように着地できたとしても、両脚で着地した時のようにベッドを踏み込めるでしょうか?片足で着するということはトランポリンに加える力がほぼ半分になります。つまり両脚着地に比べてベッドを踏み込むことが出来ないのです。

 前回書いた様に高い跳躍をするには、ベッドを踏み込んでエネルギー供給することが必要です。片足着地ではそれが出来ないため、高い跳躍はできないものと思われます。同様にスタンスを広げると、関節や骨の変形によりエネルギー供給量が減少するため、跳躍高さが減少するのでないかと思います。

 

 

 

2019年

12月

23日

技をすると高さが減る

 技をかけると一般的にはストレートジャンプより高さが減ります。これをエネルギー的に考えると、ストレートジャンプで使用していたエネルギーの一部を回転運動などのために使われるため、跳躍に使われるエネルギーが減少し、その結果として高さが減ると考えられます。

 

 

 

2020年

1月

03日

ストリングスベッドはなぜ跳ねるのか?

 最近あまり見かけませんが、ストリングスベッドは現在使われているテープベッドより高く弾みます。

 それは線が細いからです。細いため空気抵抗が少なく、断面が小さいためよく伸びます。でもそれだけではありません。テープベッドは縦糸と横糸の交叉部が縫製されており動かないようになっています。それに対してストリングスベッドは固定されていませんので、ずれることが可能となっています。

 このことから、微小レベルでみるとストリングスベッドは単純支持梁(ピン支持梁)、テープベッドは両端固定梁に近い構造となっています。中央に力が加わった場合の式はそれぞれ以下のようになります。

 

 

単純支持梁(ピン支持梁)

 

  δ=PL^3÷48EI

 

 

 

両端固定梁

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