トランポリンの科学徒然日記

 トランポリンに関して力学を中心に科学的なことを、思いつくままに書いているコーナーです。

なかにはトランポリンの技術に役立つ話もあるかもしれませんが、トランポリンに関する雑談も多く、数式なんかも出てくることもありますので、興味のある人だけ読んでください。

 ※タイトルは「日記」となっていますが、実際は週1回程度しか書いていません

2016年

5月

09日

並列ばね

 前回は直列ばねについて書きましたので今回は並列ばねについて書きます。

 これも理科で習ったと思いますが並列ばねの全体のばね定数は以下の式となります。

  K=k1+k2

 

 バネが3本以上ある場合は

  K=k1+k2+k3+・・・・+kn

 となります。トランポリンにおいては、スプリングが並列ばねに当たります。ミドルサイズなら100本、国内製競技用トランポリンなら112本または116本、現在競技で広く使われているユーロトランプなら120本のバネが並列に並んだものとしてモデル化できるのです。

 通常ばねの個々のばね係数は製造誤差を無視すればすべて同じですので、1本のスプリングのばね定数をkとすると、ユーロトランプの場合のスプリング部分のばね定数は120kとなります。

 日本製のゴライアス(セノー製品)の場合ばねの本数は116本ですので、フレームに合わせてスプリングを116本張った場合、1-116/120=0.033、つまり3%強程度ユーロトランプ(120本)よりスプリング部分のばね定数は低くなっていることになります。それでも固いと言われていますので、スプリング1本のばね定数を3%程度下げても、ユーロトランプに近づけることはできないことがわかります。

 

2016年

4月

18日

直列ばね

 トランポリンの性能(剛性)は、フレームとスプリングとベッドの性能により決まります。フレームも、スプリングも、ベッドも弾性体です、力学的には1種のばねとモデル化できます。つまり、3つのばねが直列に並んだ直列ばねとしてモデル化できるのです。

 理科で習ったと思いますが、2本のばねが直列に並んだ時、個々のばねのばね定数をk1、k2とすると全体のばね定数Kは以下のようになります。

 1/K=1/k1+1/k2

 

 以上は2本の場合ですが、トランポリンの場合はフレーム、スプリング、ベッドの3つありますので、上記の式では求められません。でも3つの場合でも簡単です。3つの直列ばねの全体のばね定数は以下の式で求められます。

 1/K=1/k1+1/k2+1/k3

 

 前回書いた様に2つのうちフレームとベッドのばね定数は変更できませんので、残りの1つであるスプリングのばね定数を変更すれば、全体のばね定数は調整できるということがこの式からわかります。

2016年

3月

14日

トランポリンをやわらかくするには その3

 前回書いた様に、テンションを下げても完全には試合で使われるユーロトランポリンの固さには近づけないようです。どうしても同じ程度にするには、ばね自体を変えるしかありません。ばねの剛性を低くすることによりフレームとスプリングの剛性をユーロトランプのものに近づければ似たような感触になると思われます。

 そのためには、ばね自体の性能を変えるしかありません。つまり既製品のばねを用いているのではなく、日本製のフレームに合わせたばねを特注するしかないのです。

 

 

2016年

2月

22日

トランポリンをやわらかくするには その2

 前回書いたようにばねの本数による調整は望ましい方法ではありません。一般的にはフレームとばねの間に金具を挟んでやわらかくする方法がとられています。この方法の場合耐久性にはあまり影響がないので好ましい方法と思われますが、実際この方法をとってもまだ固いと言われています。

 この方法はトランポリンの剛性を低くするのではなく、ベッドやばねの張力(テンション)を下げるだけだからです。テンションが下がれば多少やわらかくなりますが、それによる調整では完全には調整できないようです。

2015年

12月

07日

トランポリンをやわらかくするには

 フレームは高価でベッドやスプリングに比べて耐久性があります。そのため公共体育館などでは、日本製のフレームを使用し続けるケースが多いです。しかし競技トランポリンを考えると試合とできるだけ近い状態で練習したいものです。そこで、トランポリンをやわらかくすることが試みられています。

 まずベッドとフレームは変えようがありません。ベッドは試合と同じものを用いていますし、フレームは高価でそう簡単に入れ替えることができません。だからスプリングの部分で工夫するしかありません。

 一番簡単な方法はスプリングの本数を少なくすればスプリング部分の剛性が低下し、やわらかくすることができます。しかしこの方法はお勧めできません。

 以前書いた様に日本製のフレームの方がユーロトランプよりもばねの本数が4本あるいは8本少ないです。それにもかかわらず固いのです。数本抜いた程度では望む程度の調整はできないのです。あまり多く抜けば分散していたベッドやフレームへの負担が特定の部分に集中することによりベッドやフレームの痛みが速まります。つまり耐久性に問題が出るのです。またこのような使用は本来の使用法とは異なりますので万が一けがをした場合過失責任を問われる可能性が非常に高くなります。ばねの本数による調整は耐久性や法的な過失責任の問題から行ってはならない方法です。

2015年

11月

30日

トランポリンは、ベッドとスプリング(ゴムケーブル)の弾力を利用した跳躍運動である

 表題の“トランポリンは、ベッドとスプリング(ゴムケーブル)の弾力を利用した跳躍運動である。”とは、(公財)日本体操協会のトランポリン普及指導員資格認定講習会教本の単元1の冒頭に書かれた記述です。力学的に考えるとこの表記は少々おかしいのです。

  前回書いた様に同じユーロトランポリンのベッドとばねを日本製のフレームに取り付けると固いと言われています。そしてその原因はフレームにあるのです。

  従来日本製のトランポリンはやわらかいストリングスベッドを用いていましたので、堅く頑丈にできています。一方ユーロトランプは堅いテープベッドを用いていましたのでそれを補うためにフレーム全体がしなるようにして全体的な剛性を低くして高く跳べるようにしているようです。フレームが固いためユーロトランプのベッドとばねを用いても日本製のフレームが固いので競技会で使用されているユーロトランプと比べると固くなってしまうのです。

  フレームもばねも同様に金属で作られています。そして金属は弾性材料なのです。フレームも弾性体であり力が加われば変形しそして弾力をもつのです。だから力学的に考えると、“トランポリンは、ベッドとスプリング(ゴムケーブル)の弾力を利用した跳躍運動である。”ではなく、“トランポリンは、ベッドとスプリング(ゴムケーブル)とフレームのの弾力を利用した跳躍運動である。”といえるのです。

  日本製のフレームのようにフレームがほとんど変形しないように作っているのならその変形量はほんのわずかであり無視できるようになりますが、ユーロトランポリンのようにフレームのしなりも含めて設計されている場合その変形は無視できません。その結果が日本製のフレームにユーロベッドを張ると固くなるということなのです。

2015年

11月

16日

国内製フレームにユーロベッドを張ると固くなるのはなぜか?

 ベッドの性能が国内競技用トランポリンで使用されていたストリングスベッドの方よりユーロのテープベッドの方が固いことを前回説明しました。では同じベッドを用いてもなぜ国内製品の方が固くなるのでしょうか?

 それはベッド以外の部分が固いからです。ばねについてはユーロと国内メーカーで多少性能は異なるかもしれませんが残念ながらその違いを示すデータはありません。しかしばねとベッドをともにユーロ社製品にしても日本製のフレームにつけるとユーロトランポリンよりかなり固く感じられます。

 ちなみに、ばねの本数はユーロトランプは120本、国内製品は116本か112本です。ばねの本数を考えると本数が少ない分日本製のフレーム取り付けた方がやわらかくなるはずです。しかし現実はその逆です。その原因はどこにあるのでしょうか?

 トランポリンはベッドとばねとフレームで構成されています。ベッドとフレームは同じにしても硬さが違うということは、その原因は残るフレームにあるのです。

2015年

11月

09日

ユーロトランプのベッドはなぜ固いのか

 日本製の競技用トランポリンはセノー製品でいうレギュレーションサイズから始まり(現在のミドルサイズ、普及台、社会体育用ともいう)、一回り大きなゴライアスへと変わってきます。ベッドについてテープベッドの幅をどんどん狭くしていき、最後はテープベッドではなくストリングスベッドへとなりより高く跳べるものとしてきました。

 テープベッドは以前書いた様にメッシュベッドとストリングスベッドの中間的な性質をもちます。ストリングスベッドの方が1本1本の繊維が細くできておりその分やわらかくなっています。

 また、テープベッドは交差部が縫製されていることから構造的モデル化する場合、交差部から交差部の間を1本の線材と考えることになります。短い線材がいくつも並んでばねを介してフレームからフレームへつながる1本の直線を構成するモデルとなります。これに対してストリングスベッドでは端から端まで1本の線材となります。つまりテープベッドは太く短い繊維が並んで、それぞれの伸びを足し合わせたものが1本分の線の伸びとなり、ストリングスベッドは細く長い1本の繊維の伸びがベッドの伸びとなります。細く長い方が柔らかいというのはイメージしやすいように、ストリングスベッドの方が柔らかい、すなわち、ベッド自体の剛性(硬さを示すもの)はストリングスベッド<テープベッドとなっています。

 以上から日本製のトランポリンベッドに比べてユーロトランポリンのベッドは堅いものとなっているのです。

2015年

9月

28日

トランポリンのパーツ その6 フレーム

 トランポリンで一番高価で大きなものがフレームです。フレームはほとんどが金属で作られています。

 ところで、最近は、ドイツのメーカーであるユーロトランプ社のトランポリンが国際大会で使われることが多いため、国内の大会でもユーロトランプを用いることが多いです。しかしトランポリンがオリンピックに採用され国際化する以前は、日本国内の競技会では国内の日本トランポリン協会公認メーカーのトランポリンが用いられており、公共体育館などではまだそのトランポリンが用いられていることが多いです。

 フレームのサイズは国内メーカーのものとユーロトランプ社製のものもほとんど同じです(ばねの本数は若干異なります)。だから高価なフレームはそのまま国内製品を用いて、消耗品であるベッドはユーロ社製のものにすることが多く行われています。

 ここで問題なのは、国内製のフレームにユーロトランプのベッドを張ると、ユーロトランプ社製のトランポリンに比べて固くなるということです。次回からその原因について検証していこうと思います。

 

 

2015年

9月

14日

トランポリンのパーツ その5 金属疲労とクリープ

 金属バネはゴムケーブルより長持ちします。しかし金属には金属疲労という現象があります。金属疲労というのは、本来弾性限界を越えなければ金属は壊れませんが、くり返し力が加わることに疲労して、弾性限界以下の力しか加わらなくとも、壊れてしまう現象をいいます。

 一方ゴムにはクリープとい現象があります。本来弾性体は荷重を取り除くと元に戻るのですが、長期的に荷重が加わると変形が残ってしまう現象をクリープといいます。ゴムや木材は弾性体ですがクリープが発生する材料です。

 金属の金属疲労は使用中にかかる荷重により発生しますが、ゴムケーブルを用いたトランポリンの場合トランポリンのベッドの重さが長期に加わることによりクリープ現象によりゴムが伸びてしまい、使わなくても劣化してしまいます。このため、ゴムケーブルの方がばねよりも早く劣化します。

 

2015年

8月

31日

トランポリンのパーツ その4 バネ

 バネはベッドに比べると固いですが、弾性体です。トランポリンのばねには鋼製のコイルばねとゴムケーブルの2種類があります。競技用では金属バネが用いられますが、普及用では金属ばねを用いたものとゴムケーブルを用いたものがあります。ゴムも金属も弾性材料で、形状も単純なのでベッドよりもはるかにモデル化が容易です。なお、弾性というのは力(荷重)を加えても力(荷重)を取り除くと元に戻る性能を意味しています。

 ゴムと金属を比べると弾性係数(硬さを示す値)はゴムの方が低い、つまりやわらかいです。

 金属もゴムも弾性限界という値があり、これを超える力が加わると弾性性を失い、元に戻らなくなります。金属の場合一般に塑性化して元に戻らなくなり、ゴムの場合は破断することが多いです。

 

 

2015年

8月

24日

トランポリンのパーツ その3 ベッド

 トランポリンのベッドは弾性体と考えられます。弾性体はばねとしてモデル化することができます。

 トランポリンのベッドにはメッシュ、テープ、ストリングスの3タイプがあります。メッシュベッドは一体成型されており、繊維と繊維の隙間が小さく、また結合部は一体化しています。これに対してストリングスベッドは隙間が大きく、繊維と直行する繊維は固定されておりません。メッシュベッドは網目と網目の間の繊維1つ1つが1つのばねとしてモデル化できますが、ストリングスベッドは端から端までが1つのばねとしてモデル化するのが妥当です。同じベッドでもミクロな目で見ると力学出来に異なるモデルになります。ストリングスの交差部は固定されていませんが、摩擦により若干動きが拘束されています。つまりストリングスベッドは摩擦を考慮しないとモデル化は難しいものとなっています。

 競技で一般的に使われているテープベッドの隙間は大きいですが、交差部は縫製により固定されています。つまりメッシュベッドとストリングスベッドの中間的な性質となっています。

 なお、隙間が大きければ、それだけ空気抵抗が少なくなっています。ユーロトランポリンのテープベッドに規格(4×6→4×4)が変わった際に性能がずいぶん変わりましたが、テープ幅が細くなったことによりばねの剛性が低くなった事と隙間が大きくなり空気抵抗が小さくなったことが原因と考えられます。

2015年

8月

17日

トランポリンのパーツ その2 パッド2

 前回書いた様にパッドには2種類あります。力学的に見てこれらはトランポリンの性能に影響しないように思われますが、じつは多少は関係があります。それは空気抵抗です。

 公共施設などの社会体育用のトランポリンでは古いテント生地のウェーブテープベッドがまだ使われていることがあります。非常に頑丈なので、あまり使用頻度がない体育館では数十年前のものがまだつかわれているのです。当時は幅広タイプのパッドではなかったのですが、パッドの方が先に傷んでしまい幅広タイプに交換したものでは、非常に性能が落ちます。古いウェーブテープベッドはベッドに隙間がほとんどなく空気抵抗が大きいです。細幅タイプの場合ばね部分から空気が抜けますが、幅広にするとその部分から空気が抜けなくなり空気抵抗が非常に大きくなるので、性能が低下するのです。

 パッドの大きさは空気抵抗に影響を与え、空気抵抗が大きくなると性能が低下するのです。現在流通しているベッドは空気抵抗が小さくなっていますので、幅広タイプでもそんなに変わらないと思いますが、埋め込み式などにすると、横に空気が抜けなくなるためやはり性能は低下するようです。

2015年

8月

10日

トランポリンのパーツ その1 パッド

 長らく更新をさぼっていましたが、今回からトランポリンの構造について検討していこうと思います。

 トランポリンは大きく分けて4つのパーツでできています。フレームとベッドとばねとパッドです。

  今回はまずパッドについて書きます。

 パッドには2種類のパッドがあります。フレーム部分だけを覆うもの(細幅タイプ)とフレームだけではなくばね部分も覆うもの(幅広タイプ、フルパッドということもあります)です。

 細幅タイプは主に社会体育用のものに用いられています。ばねの部分の開口部をあえて見せることにより心理的な効果により、中心部分で跳ぶようになると言われています。

 幅広タイプは競技用に用いられるもので、限界を追求するため、開口部をふさいで万が一に備えての安全性を高めています。細幅タイプは万が一を発生しないようにしているのに対して、幅広タイプは競技トランポリンでは限界を追求する為ばね部分に落下する危険性を考慮して作られています。

 

2015年

5月

18日

位相-腕の位置

 以前書いた様に姿勢により重心位置は変わります。

 現在のトランポリン競技では宙返りに入る前にアクションジャンプといって腕の運動を予備ジャンプと切り替えて行うことが普通に行われています。予備跳躍では着床時に腕は下していますが、宙返りに入る際には腕を上げた状態で入るのです。腕の動きを回転運動とするとちょうど180度ずれた状態となります(このような動きを位相が180度ずれると言います)。

  腕を上げると、腕の重さの分だけ重心が高くなります。重心位置が高いということはそれだけ不安定になりやすくなります。つまり予備跳躍より不安定な姿勢で宙返りに入ることが現在のトランポリン競技では行われています。

  なお、このようなことを行うのは、腕を下から振り上げて入るとトラベルしやすいことや、振り上げてから入ったのでは、その分開きが遅れて演技点が出ないことが理由のようです。

 

2015年

4月

13日

重心位置と回転

 機械振動の分野では回転の中心である回転軸は重心を通るようにすることが回転機械の設計の基本です。回転軸と重心位置が異なるとがたつきが生じ効率よく回転が出来なかったり、騒音や大きな振動を発生して問題が生じます。

 同様にトランポリンなどの回転競技においても重心位置に回転軸ができるだけ通るように回転することがより効率的な回転運動をすることが出来ることが予想されます。また重心と回転軸が一致している方がトラベルも少なくなることが予想されます。

 前々回書いた様に、姿勢により重心位置は変わりますので回転の姿勢により回転軸を変えるという技術があればより効率的な回転運動ができるということが予想されるということです。捻りの場合は左右対称ですので比較的重心と回転軸を一致させることは難しくなさそうですが、宙返りの場合は重心位置を把握するのが難しくかなり難しいと思います。

 

2015年

4月

06日

衝撃力2

 以前書いた「衝撃力」について質問がありましたので、今回はその補足を書きます。

 

 衝撃力の算出は難しく「衝撃力」で用いた数式で評価することが行われています。ここで問題はΔtの評価です。このΔtを評価することが非常に難しいと言われています。

 幸いトランポリンについては、過去に着床-離床の時間を調査したものがいくつかあります)。その結果が0.2~0.3秒となっています。

 落下の速度はベッドに着床する瞬間が最大で一番沈んだ時に0になります。トランポリンの金属バネは線形弾性体と考えられますので、伸びるときも縮むときも同じ動きをすると考えられます。つまり、着床から離床までが0.2~0.3秒なら、Δtはピーク速度から0になるまでの時間ですので、この時間を半分にして0.1~0.15秒として評価してよいと思います。そうすると「衝撃力」で書いた様に衝撃力は体重の6~10倍程度となります。

 高さ5mから落ちるというのは大体3階の窓枠にぶら下がっている人が地面に落ちるのに相当します。地面の場合トランポリンと異なり地面にぶつかってから速度が0になるまでの時間は0.1秒もかかりません。地面の場合トランポリンと異なり沈み込む時間は感じられませんので、停止までの時間は桁が違うと思います。仮に地面にぶつかってから0.01秒で停止するなら60~100倍の力が発生することになります。それと比較すれば体重の10倍程度の衝撃力というのは小さなものと考えられます。

 ところで、ジョギングなどでも体重の3倍~5倍程度の衝撃がかかると言われています。

 ジョギング程度の運動でも3倍~5倍の衝撃力がかかるのです。ジョギングの場合片足着地で、トランポリンの場合両足着地ですので、片足にかかる力は半分と考えられます。つまり片足にかかる力は体重の3倍から5倍となります。トランポリンの脚にかかる衝撃力はジョギングとほぼ同じと言えます。ジョギングは特別な動きではなくごく一般的な人の動きと言えますので、それと同等ということは、トランポリンではそれほど大きな衝撃力はかかっていないということになります。

 衝撃力が体重の何倍という表現は一見非常に大きな印象を受けますが、極めて短時間に発生する衝撃力では、数倍程度というのは日常的に発生することなのです。

 5mの高さから落ちても体重の10倍程度しか発生しないということが、トランポリンの緩衝力のおかげといえるのです。そのおかげでジョギング程度の衝撃力しかかかっていないと言えると思います。

 最後に、トランポリンの緩衝力というのは、物理的には、速度変化の時間、停止までの時間を長くすることにより衝撃力を低下する性能のことを意味していると言えるのではないかと思います。

2015年

2月

16日

重心位置は変わる

  前回までに書いた様に質量分布や重心位置は形状によって変わります。これはどういうことになるのでしょうか?

 トランポリン競技において形状は姿勢というもので現れます。レイアウト(伸身)、パイク(蝦型)、タック(抱え型)、パック姿勢の4つ姿勢があります(パック姿勢は競技則上ではタック姿勢と同じとみなされていますが形状からいうと別なものになりますので)。これらの姿勢が違うことによって重心位置も変わるということです。

  またスキーやボードの選手がトランポリンを使って練習することもありますが、板をはいた状態と板を履いていない状態では、重心位置が変わることも注意が必要です。板をはくと板の重さの分だけ重心位置は低くなりますので。

 

2015年

1月

26日

重心を求める

 複雑な形状や部分的に重さの異なるものの重心を求めるには積分を用います。平面の場合各部分の密度をある基準点からの距離で積分して全体の重さで割ると基準点から重心までの距離が求められます。

 つまり形状と密度または質量分布がわからなければ、計算で重心を求めることはできないのです。人体の場合骨と筋肉と脂肪や血液など部分によって密度が全然違う組織が複雑に組み合わさって、構成されているため、計算で求めることは難しいようですが、実測により人体の重心位置を求めた研究などがあるようです。

2014年

12月

22日

図心

 前回基本図形の重心の話をしましたが、前回取り上げた基本図形の「点」は正しくは「重心」ではなく、「図心」です。小学校のレベルでは、「図心」と「重心」は一致しますが、一般的に「図心」と「重心」は異なることも多いのです。図形を書いた紙の様にどの部分も材料が変わらない、つまりどの部分の密度や重さがが一定のような材料の場合図心」と「重心」は一致するのです。

 例を出して説明しましょう。横から見て長方形に見える水槽のような箱の中に、半分だけ水を入れたとしましょう。上半分は空で、下半分は水が入っています。重さの中心と言われる「重心」は下に下がっていると言えば計算しなくともわかるでしょう。これに対して「図心」形状そのものの心ですので、水が入っていようがいまいが変わりません。つまり「図心」と「重心」の位置は同じでなくなっています。

 このように部分的に重さの異なるものや複雑な形状をしたものの重心を計算で求めるに必要なのが積分なのです。

2014年

12月

08日

重心

 スポーツでは重心というのは非常に重要なものです。重心を落とせとか指導することもよくありますので、重心という科学用語はスポーツ関係者にもなじみのある言葉だと思います。それでは重心とはなんでしょうか?よく使いはし、なんとなく重さの中心とか、場所は臍の下あたりにあるとかは分かっているが、実はよく理解していないという方も多いのではないでしょうか。今回はそんな重心にかかわる話題です。

 話は変わりますが、小学校の算数で二等辺三角形や長方形の重心を求める計算をしたと思います。二等辺三角形なら底辺の中心点と頂点を結ぶ線の長さの底辺から3分の1の位置に重心はあります。長方形なら2つの対角線交点つまり長辺の長さの2分の1、短編の長さの1/2の位置に重心があるとしています。このように単純な図形では公式のようなもので重心を求めることが行われています。

この算数で習った重心とスポーツで使う重心とは同じものを指しているのです。では人体の重心を求めるにはどうすればよいのでしょうか?

 実は重心を求めるには積分の知識が必要なのです。

2014年

11月

17日

積分

 積分というと高校の数学で習うものですから難しいように思いますが、数学の中でも日常でよく使う項目です。

 実は積分とは呼んでいませんが、積分はすでに小学校で習うことに含まれています。三角形の面積を求める、平行四辺形や台形の面積を求めるというのは、積分をしていることになります。

 このように積分とは日常生活に密着したものであり、積分を理解し、利用することはスポーツにも非常に役立つ事なのです。

2014年

11月

10日

踏みとは何か

 前回書いた様に「白樺のポーズ」は高い跳躍をするために必要な技術です。この技術はトランポリンの弾性エネルギーを効率よく運動エネルギー・位置エネルギーに変換する技術です。

 一方トランポリンは落下の運動エネルギーを弾性エネルギーに変換する装置でもあります。しかし、「白樺のポーズ」は弾性エネルギーと運動エネルギーの変換効率を高める技術にすぎません。「白樺のポーズ」をとってよく締めて落下して、完璧なエネルギーが変換されても跳躍高さは徐々に低くなります。なぜならベッドの空気抵抗やばねとフレームの間で起こる摩擦によるエネルギーロスは必ず発生するからです。つまり締めや姿勢だけでは高い跳躍は出来ないのです。

 ここで、以前「トランポリンを使っても一定の高さまでしか飛べないのはなぜか」で書いた様に人体からトランポリン加わる力を説明しました。この力があるからこそ予備跳躍で徐々に高さが増していくのです。「白樺のポーズ」はエネルギーの変換効率を高めるだけの技術に過ぎず、外部から加わるエネルギーがなければ跳躍が高くなることはないのです。この外部からエネルギーを加える技術が「踏み」と呼ばれる技術です。

2014年

10月

20日

力学的に見た「白樺のポーズ」2

 「白樺のポーズ」は人間が本来持っているクッション性をなくす姿勢です。そのために「白樺のポーズ」をとることにより何か障害が出るかもしれません。そう思っていろいろ検索してみましたが、その点について言及しているものはほとんど見つかりませんでした。

 ただ一つ見つかったのは、「白樺のポーズ」を陸上にとい入れている福島大学の川本先生のコメントです。川本先生によると陸上においては、シューズの性能が高まりシューズによるクッション性でカバーできるので問題ないということです。

 ところでトランポリンの場合はどうでしょうか?トランポリンの場合地面と比べて衝撃が加わる時間が長く、地面より緩衝性が高く、瞬間的にかかる衝撃力は弱いと思われます。逆に上昇する際に大きな弾性力が加わりますので、骨格の持つS字に大きな変形が加わりますので、むしろ「白樺のポーズ」をとらないと、必要以上に変形が起こり、腰などに負担がかかり障害になることがあるようです。

 もっとも、週1回程度、それほど高い跳躍することを求められていないエアリアルトレーニングを受けている子どもなどではそんなに衝撃力が加わるわけではないので、そこまで気にしなくてもよいと思われます。

2014年

10月

13日

力学的に見た「白樺のポーズ」

 前回骨格構造がS字状になっている理由について書きました。そしてだいぶ前にフックの法則について書きました。今回はその2つを結びつけるお話です。

 人間の骨格は脳を保護するためのクッション性を備えています。しかしこのクッション性があるとフックの法則で説明したように、トランポリンの弾性を吸収して跳躍を妨げることになります。つまり高い跳躍をするには人間が生まれつき持っている骨格構造によるクッション性は邪魔なのです。

高い跳躍をするには、クッション性がなくなるようにすることが必要となります。クッション性をなくすには、骨格の持つS字を直線に近づくようにすれば、できます。

この骨格を直線に近づけるための姿勢が「白樺のポーズ」なのです。骨格を直線に近づけるとクッション性がなくなるので、「白樺のポーズ」はエネルギー伝達率が高くなるのです。

2014年

10月

06日

力学的に見た人間の骨格構造

 人間の背骨は横から見るとまっすぐではなく、緩やかなS字を描いています。これはなぜでしょうか?

話は変わりますが、パンクした自転車に乗ったことがあるでしょうか?ガタゴトして非常に不快です。時点のタイヤはゴムチューブで空気を閉じ込めています。この空気がクッションの役割を果たしています。さらに高速で走る自動車の場合はタイヤのクッションだけでは快適性を確保できないため、サスペンションというものがタイヤとボディの間に挟まれています。

人間の身体も同じです。自転車や自動車の場合人体への影響を避けるためにクッションとしてタイヤやサスペンションが使われていますが、人体の場合脳を守るためのクッションが必要です。背骨がS字状になっているのは、その形状により1種のばね(サスペンション)となり人間の器官の中でもっとも重要な脳を守っているのです。

2014年

9月

29日

白樺のポーズとは

 トランポリンでは締めが必要といわれています。きちんと締めていれば高く跳び上がるとも言われています。締めは姿勢とも関係があります。その姿勢は体操競技でいう「白樺のポーズ」であるといわれています。

 「白樺のポーズ」は美しい姿勢であるとも言われていますが、力学的に考えると非常に優れた姿勢であるとも言われています。

 「白樺ポーズ」については『どの子ものびる運動神経 指導者編』(白石豊、星香織著)に非常に詳しく書かれていますので、詳しくはそれをご覧いただくとして、同書によると「運動エネルギーの伝達効率が極めて高い」姿勢であるということです。

トランポリンにおいて「運動エネルギーの伝達効率が極めて高い」とは、トランポリンの弾性エネルギーを跳躍の運動エネルギーに変換する際の伝達効率が高いということを意味しています。つまり高い跳躍ができるということです。だから「白樺のポーズ」をとることが必要といわれています。

2014年

9月

22日

衝撃力

 トランポリンでからだに加わる衝撃はどれくらいあるのでしょうか?今回はそれを求めてみたいと思います。

 動いているものの速度が変化する際には運動量というものが変化します。そして運動量の変化は、力積と等しくなります。

 体重Wのトランポリン選手が速度Vで着床した場合、最下点では速度が0となりますので、運動量の変化はW(V-0)/Gとなります。ここでGは重力加速度(9.8m毎秒毎秒)です。

 力積は力と運動量の変化に要した時間の積ですので、F×Δtとなります。ここでΔtは時間です。

 さて、トランポリン選手が跳躍の最中にトランポリン上に載っている時間は0.20.3秒といわれています。これは上昇・下降の往復時間ですので、下降つまりトランポリン選手がベッドに着床してから最下点までに到達する時間はこの半分の0.10.15秒です。

 F×Δt=W(V-0)/G=W×V/G

ですので、衝撃力F=W×V/G/Δt=W×9.89.8/Δt=W/Δtとなります。

 前回落下速度を求めました。V=秒速9.8mです。Δtは0.10.15ですので、0.1とすれば、衝撃力Fは10W、0.15秒とすると約6.67Wとなります。

 つまり体重の6.6710倍の力がかかることがわかります。体重60kgfの選手なら、400600kgfの衝撃力がかかることがわかります。なお、これは着床してから最下点までに到達する速度の変化が一定の場合を想定しています、つまりトランポリンに載っている間の平均的にかかっている力なので、瞬間的にはもっと大きな力がかかっているかもしれません。

2014年

9月

01日

落下速度

 以前トランポリン選手はどれくらい跳んでいるかということについて書きました。その際滞空時間を2秒とすると4.9m跳んでいるということを算出しました。今回はその続きで4.9mの高さから落ちた場合どのくらいの速度で落ちているかを求めてみます。

 トランポリンの跳躍の頂点では速度は0です。そして地上では重力加速度Gがかかっていますので、徐々に加速していきます(空気抵抗などは無視しています)。重力加速度は9.8m毎秒毎秒ですから、頂点から落下し初めて1秒後は9.8m毎秒という速度になります。時速に換算すると1時間は3600秒ですので9.8×3600=時速35280m、つまり時速35.28kmです。これはトランポリンの着床する直前のトップスピードとなります。

ところで、秒速9.8ですと100m進むのは10秒以上かかりますので、短距離走のトップ選手より遅いことになります。短距離走の100mの記録は平均速度ですので瞬間の最高速度はもっと速いということになります。つまり、陸上のトップ選手はトランポリン選手が落ちる速度よりずっと速い速度で走っていることになりますね。そう考えると陸上選手はすごいですね。

2014年

7月

14日

予選得点の持越し

決勝進出者は予選の得点の低いものから試技を行います。つまり、予選1位のものは決勝では一番最後に試技をすることになります。試技順が遅いということは、前に選手の得点を見て試技をすることが出来ますので、その点については有利となります。

 地方大会では予選の得点を持ち越せる場合もありますが、通常の大会では予選の得点は試技順に反映されますが、得点自体は持ち越しません。つまり決勝の試技だけで最終的な順位が付きます。

 予選の得点が持ち越せる場合、予選上位者ほど有利になりますし、試技順も後なので、前の選手の得点を見て難度構成を考えることもできます。予選1位のものは他の選手の結果を確認して、自分の出せる得点を予測し、難度を押さえるという安全策がとりやすくなります。逆に言うと予選の順位の低いものが逆転を狙うにはより難しい種目に挑戦していかなければならず、失敗しやすくなります。

 予選の得点を持ち越せない場合でも試技順が後ろの方が有利なのは変わりませんが、予選の得点がない分、決勝進出者間の条件は近くなるということです。

 だから、演技点が出ないけれど難度点が出る選手は、演技点の比重が高い予選を下位で通過しても、決勝では逆転がしやすくなっています。

2014年

7月

07日

予選と決勝

 今回はあまり科学的な話題ではないですが、トランポリンのルールについて書きます。

トランポリン競技の公式ルールでは予選で2回の試技を行いその合計点が高いものが決勝に進みます。

予選では第1演技、第2演技と2回の試技を行います。第1演技は10種目の内2種目の難度点が付きますが、他の種目の難度点は尽きません。またこの2種目は第2演技で使用することはできなくなっています。つまり第1演技の2種目と第2演技の10種目合計12種目の難度点と、2回の試技のTスコア(跳躍時間)と演技点の合計で予選は行われます。言い換えれば演技点は20種目に対する評価に対して難度点は12種目の評価となっています。決勝は10種目の演技点と10種目の難度点であるのに対して予選は演技点の比重が高くなっています。逆に言い換えると相対的に決勝は難度点の比重が高いといえます。

2014年

6月

09日

流体力学2

 新幹線はしばしばデザインが変わっていますが、空気抵抗を少なくするように改良された結果のようです。イルカなどは流線形をしていますが、流体力学的に抵抗が少なくなる形に進化した結果のようです。

 トランポリン競技では、つま先を伸ばすことになっています。これは演技点の採点に反映されるからです。また締めを作り空中の安定性を保つのにも必要な技術です。

 流体の中に物体があると流体はそれをよけて流れます。物体の下流には、渦が発生します、この渦が悪影響をして物体が進むのと反対方向の力を生じることがあります。この後方に発生する渦が悪影響しないような形状にすることも流体力学上有効な方法だそうです。

 実際解析したわけではないので断定はできませんが、つま先が曲がっている状態と、つま先を伸ばした状態では、おそらくつま先を伸ばした方が、渦の影響を受けにくいのではないかと思います。水泳競技などでは水の抵抗を少なくする姿勢というのも研究されているようです。空気の抵抗は水と比べればわずかですが、トランポリンでもTスコアを伸ばすのに有利な姿勢というのが将来研究されるかもしれませんね。

2014年

6月

02日

流体力学

 トランポリンの服装規定で、体にぴったりした服を着ることになっています。男子は体操ズボンが使われていますが、実際演技をしているのを見ると宙返り中にズボンがはためいていることがわかります。

 会場は屋内ですので、服をはためかすほどの風は吹いていません。つまり空気の抵抗を受けているため、体操ズボンはためくのです。

空気や水の流れを学問的に行う分野を流体力学といいます。自分は流体力学は専門外ですので詳しいことは分かりませんが、空気抵抗を少なくすればそれだけ回転数を上げることができるかもしれません。

 前回書いた摩擦も含めて、より優位なウェアが開発されるかもしれませんね。

2014年

5月

26日

摩擦4

 最近競泳の水着が大きく変わりました。一時期はハイレグがはやりましたが、最近のものは女性でも太もも部分を覆ったりして、肌の露出が少なくなっています。

 水泳では人体と水の間で、摩擦が生じます。当然摩擦が少ない方が有利になります。人の肌より水着の繊維の方が摩擦が小さければ、水着で覆った方が有利ですし、逆なら肌をし露出した方が有利です。技術の進歩でひと肌よりも摩擦抵抗の少ない繊維が開発されたため、露出が少なくなったのだと思われます。

 一方同じ水泳競技の1つでも、飛込競技は肌の露出が多い昔ながらの水着が使われているようです。飛込競技はタイムではなく美しさを競う競技ですので、美し見える方が有利です。トランポリンも同じ演技点を争う競技ですし、水より摩擦の小さい空中で行う競技ですが、Tスコアが導入されたことにより、もしかしたらTスコアを伸ばすために、有利なウェアが開発されるかもしれません。

2014年

5月

19日

摩擦3

 トランポリンを靴下で行うと滑るのでしょうか? 実は正しくトランポリン運動を行えば、滑りません。というわけで、前回摩擦係数のお話をしました。今回は水平に働く力fについてです。

滑るためには、接触面にf>μP以上の水平力が働く必要があります。ここで問題です。トランポリンは垂直に跳躍をするための補助器具です。水平方向への跳躍は補助しません。垂直に力を加えて、垂直に跳躍するための器具がトランポリンなのです。だからトランポリンに水平力を加えるのは、本来行うべきでない力が発生していると言うことになります。

トランポリンでは、宙返りや捻りによる回転運動を行いますので、それによって水平力が発生しますが、着地の際にはその回転力を停止して垂直に落下するのが、正しいトランポリン運動です。水平力が発生するのはこの回転コントロールが正しくできていないまたは、斜めに落下しているなど、トランポリンという器具を使うための技術が不足しているからです。トランポリン運動が正しくできている、すなわち回転をコントロールし、まっすぐ垂直にトランポリンに着地していれば、水平力fは発生しませんすなわち0ですので、摩擦力を上回ることはありませんので、滑ることはありません。

トランポリンで滑るというのは、跳躍補助器具としてのトランポリンという器具の本来の使用方法をしていないか、単純に跳躍や回転コントロール技術が不足していると言うことになります。

なお、体操競技で使用するタントラ(タンブリングトラック)は水平移動して利用することを前提にしたものですので、このような場合は水平力が常時発生しますので、滑らないように裸足でした方がよいと思われます。

2014年

5月

12日

摩擦2

 体操教室では、トランポリンをする際に裸足で行うことが多いようです。一方トランポリン教室では、靴下をはくのが普通に行われております。なおトランポリン競技の場合靴下か専用のシューズを履くことになっていますので、裸足で競技に出ることは服装規定違反となるようです。

 体操経験者は靴下をはくと滑るのでいやだと言います。

 今回はなぜ滑るのかについて考えてみます。

 

 まず滑るということはどういうことなのでしょうか? トランポリンの場合、通常滑るとは着地の際に足がベッドに平行移動してしまうことです。ではこれは物理的にはどういうことなのでしょうか? 逆に言うと滑らないとはどういうことなのでしょうか? 物理的に考えると滑らないための条件があります。

 f<μP

です。ここで、fは滑る方向に働く力です。地面やトランポリン上では一般的に水平に働く力です。μは(静止)摩擦係数で、Pは荷重で、トランポリンの場合トランポリンにかかる力となります。μPが摩擦力です。

 

 摩擦係数は接触する2つの物質で決まってくる定数です。裸足の歩が滑らないというのは、裸足の方が靴下より摩擦係数が大きいと言うことになります。

 

 なお、ランニングや児童用の一部の靴下には、繊維面にゴムなどの滑り止めのついた靴下がありますし、一般的なシューズ他専用シューズなどもゴムなどを利用して摩擦係数を大きくし、滑らないような工夫がされています。

2014年

5月

05日

摩擦

 テニスの4大大会の1つの全仏オープンはクレーコートで行われます。最も権威があるといわれるウィンブルドンは芝のコートで行われます。クレーのコートはバウンド後の急速が低下するのでストローク力が強い選手が勝ちます。逆に芝のコートはバウンド後もよく滑って急速が落ちないので強いサーブを持つ選手が有利といわれています。

 どちらのコートも日本ではあまり見かけないコートです。日本では、ハードコートと呼ばれる硬質ゴムのようなコートとオムニと呼ばれる砂入り人工芝のコートが一般的で、このほかインドアコートでカーペットコートが用いられていることがあります。

 テニスのシューズは大きく分けると、オムニ・クレー用、カーペット用、オールコート(おもにハードコートで使用する)3種類が販売されています。オールコートは普通の運動靴と同じようにそこに溝がついています。オムニコートはゴム製のいぼがついています。これらに対してカーペット用のシューズの底は溝もなく平らになっています。

 コートによって靴底の形状がかえてあるのです。これは、コートの表面の性状に合わせてあるからです。オムニ・クレーは砂がありますので、滑ります。そこで、ゴム製のいぼがスパイクの代わりをして滑らないようになっています。逆にカーペットは滑らないので、平らになっています。停止する際、走った勢いを止めるのにある程度滑った方がよいからです。もし、溝やいぼがあったりすると止まるとき急に停止しすぎて、足に負担が大きくなります。

 滑りやすさ、逆に言うと滑りにくさは摩擦によるものが大きいです。つまり、テニスシューズの例のようにスポーツにおいて摩擦というのは非常に重要な現象です。

 というわけで、次回からトランポリンにまつわる摩擦の話を書こうと思います。

2014年

4月

29日

エネルギーから見たトランポリン運動(6)

 以前締めとはばね係数・剛性を高めるということを書きました。人体を弾性体と仮定するとトランポリンから力が加わった時人体が変形します。人体が変形すれば、人体が弾性エネルギーを持つことになります。エネルギー保存の法則を考えると

 トランポリンの弾性エネルギー=人体の弾性エネルギー+位置エネルギー

となります。人体が蓄える弾性エネルギーが大きければ大きいほど位置エネルギーとして使用できるエネルギー量は少なくなる、つまり高く跳べなくなりますので、締めをすることで人体の変形量を少なくすることが高い跳躍をすることにつながります。

2014年

4月

21日

エネルギーから見たトランポリン運動(5)

 エネルギー保存の法則について書いてきました。エネルギー保存の法則が成り立てば、常に同じ高さまで上昇することになります。でも予備跳躍時には徐々に高さが上がっていきます。これはなぜでしょうか?

 それは、外部からエネルギーが加えられるからです。外部からくわえられるエネルギーこそ「踏み」と呼ばれる選手自身が行う動作により発生するものです。

逆に演技に入ると予備跳躍より高さが低くなります。どんなに上手に跳んでも低くなります。これはエネルギーの一部が回転運動等の運動エネルギーとなるためです。そのため上昇に使われるエネルギーが減り、高さが減るのです。

2014年

4月

14日

エネルギーから見たトランポリン運動(4)

 今回は第3のエネルギーについて書きます。

 以前トランポリン選手は5m程度跳んでいると書きました。体重をWとすると、ピーク時では5Wの位置エネルギーを持つということになります(本当は単位を明記した方が良いのですが省略します)。

ここで、ピークより1m下がった位置では1Wのエネルギーが減少して4Wの位置エネルギーを持っています。でもこの時、トランポリン選手はまだ空中にいますので、弾性エネルギーは0です。1W分のエネルギーが減っても弾性エネルギーは増加していないのです。これではエネルギー保存の法則が成り立ちません。エネルギー保存の法則が成り立つためには、位置エネルギーでも、弾性エネルギーでもない第3のエネルギーがあるのです。

それが運動エネルギーです。運動エネルギーは式で書くとmv^2/2またはmvv/2となります。ここでvは速度です。つまり速度を持っているということは運動エネルギーを持っているということです。

エネルギーの観点から見ると、トランポリン運動はトランポリンの弾性エネルギー、運動エネルギー、位置エネルギーという3種類のエネルギー状態が割合を変えながら行われる運動となります。

 

2014年

4月

07日

エネルギーから見たトランポリン運動(3)

 今回はエネルギー保存の法則について書きます。高校の理科で習ったと思いますが、エネルギー保存の法則というのがあります。外部からエネルギーを加えたり、外部に逃げなければ、エネルギーは形を変えても総量は同じということです。

 跳躍のピークではトランポリンは変形していません(x=0)ので、弾性エネルギーは0です。もっとも下がった時では弾性エネルギーは最大となります。

 逆に位置エネルギーは跳躍のピークで最大となり、最下点では最小(h=0)となります。

 エネルギー保存の法則により、mgh=kxx/2となります。

2014年

3月

24日

エネルギーから見たトランポリン運動(2)

 今回は、弾性エネルギーについて書きます。その前に以前書いたフックの法則を復習しましょう。フックの法則ではF=kxとなります。ここでFは弾性力、kはばね定数、xは変形量です。トランポリンはばねとベッドと2つの材料により弾性力を蓄える装置ですので、実際はフックの法則で表されるほど単純なもの、ばね定数が一定なものではありませんが、ここでは簡略化してフックの法則が成り立つとします。

 この場合、弾性エネルギーはkx^2/2となります。ここで、^は累乗を示しています。書き変えるとkxx/2です。つまり、弾性エネルギーはばねの伸び量の2乗に比例します。

2014年

3月

17日

エネルギーから見たトランポリン運動(1)

 以前、トランポリンは位置エネルギーと弾性エネルギーの変換装置と書きました。今回からエネルギーから見たトランポリン運動について書いていきます。

 トランポリン運動は基本的に上下運動ですので、まず位置エネルギーから考えていきます。

最下点から跳躍のピークの高さの差をhとすると、ピークにおける位置エネルギーは最下点よりmgh大きくなっています。ここで、mは質量、gは重力加速度で、mgは体重を意味しています。つまり重さに上下方向の移動距離をかけたものが位置エネルギーです。

2014年

3月

03日

弾性とは何か

 トランポリンの弾性力と何回も書いてきました。フックの法則を用いて弾性力とは何かについても書いてきました。では弾性というのはどういうことでしょうか?

 弾性に対する言葉として塑性というものがあります。トランポリンに用いられている材料は金属と繊維です。この2つの素材は一般的に弾性材料です。これに対して塑性材料というのは粘土のようなものを意味しています。粘土は力を加えると変形したまま元に戻りません。これに対して金属は力を加えても力を取り除けば元の状態に戻ります。これが弾性という性質です。つまり、弾性とは力を加えても力が取り除かれれば元に戻る性質を意味しています。

2014年

2月

24日

座屈と正しい姿勢

 座屈という現象があります。座屈というのは、本来その物体が持っている強度よりも小さな圧縮力で、横方向に大きく曲がって壊れてしまう現象です。数式がありますが非常に複雑なので省略します。一般に細長い物質ほど座屈しやすくなります。しかし、力が物体の中心(重心)とずれた位置にかかると短くても座屈は起こりやすくなります。このように重心とずれた位置に力がかかることを偏心荷重といいます。

 トランポリンではトランポリンの弾性力が人体に加わることにより人体を空中に浮かせています。この弾性力が重心とずれると人の体も座屈のように大きく曲がって、その分だけ高く飛べなくなります。トランポリンの弾性力がかかるのは、足元ですから、体の重心が足の真上になければ、偏心荷重となり、人の体は横方向に曲がり、その分弾性力が殺されてしまいます。

 より高く飛ぶには、重心を足元の真上に位置できるようにしておくことが大切です。足の真上に重心が来るようにするのが正しい姿勢です。また偏心荷重がかかるとその分体の負担が大きくなり、故障をしやすくなります。

2014年

2月

17日

フックの法則と締め

 トランポリンでは締めが必要といわれています。ではなぜ締めが必要なのでしょうか?

1つは締めて姿勢を維持することにより空中で安定するためです。もう1つはトランポリンの弾性力を利用して跳躍するためです。

前回書いたように人体も力が加われば変形します。トランポリンの弾性力を有効に利用するには、人体の変形Xを小さくすることが重要です。人体の変形を小さくするには、フックの法則(F=KX)からいうと、Kを大きくすればよいことがわかります。Kに反比例してXは小さくなります。

 筋肉を締めると体は固くなります。つまり、締めとはフックの法則におけるKを大きくする技術なのです。体を締めて、ばね係数を大きくするあるいは剛性を高める、技術が締めなのです。

2014年

2月

10日

フックの法則とチェック

 前回フックの法則について書きましたが、人間の体も力を加えれば変形します。人間の体は金属ばねのようにばね係数で表されるようなものではないですが、ここではばね係数で表されると簡略化仮定して話を進めます。

 トランポリンの弾性力が人体に加わると、F=KXとなります。Kは人体のばね係数、Xは人体の変形量です。つまりトランポリンから押されるとXだけ人体が縮むのです。そして、人体が縮んだ分だけ、弾性力を利用できなくなります。つまり高く跳べなくなります。

フックの法則とはちょっと意味合いは違いますが、チェックを例にするとイメージとしてとらえやすいと思います。

チェックとはでは膝を大きく曲げることによりトランポリンの反発を殺して停止する技術です。チェックのように大きく変形すれば弾みが小さくなるということはイメージとしてとらえやすいと思います。

2014年

1月

27日

フックの法則

 今回はトランポリンとフックの法則について書きます。中学の理科の授業で習うと思いますが、ばねに重りをつるすとき、

  W=kx

 となります。Wは重りの重さ、kはばね定数、xが伸びる量です。これがフックの法則です。フックの法則は一般的には、F=kxと書かれます。ここで、Fは力です。

 トランポリンの弾性力とはこのフックの法則のFを意味します。

2014年

1月

20日

エネルギーから見たトランポリン

 電気製品は電気エネルギーを用いてモーターなどを回転させて動く装置です。モーターは電気エネルギーを回転エネルギーに変換する機械です。つまりあるエネルギーを他のエネルギーに変換する装置といえます。同様にトランポリンもエネルギー変換装置の1つです。

 トランポリンはトランポリンの弾性力を用いて人体を空中に跳ね上げる装置です。エネルギー的にみると、人体が跳躍するということは、人体の持つ位置エネルギーが大きくなっているといえます。つまり、トランポリンは弾性エネルギーを位置エネルギーに変換し、また位置エネルギーを弾性エネルギーに変換する装置なのです。

2014年

1月

06日

微分・積分

 微分・積分を習うのは高校の数学だったと思いますが、実はトランポリン運動を理解するには微分・積分は非常に役立ちます。

 トランポリンでの跳躍は時間によって高さが変化する運動です。前回書いたように速度とは位置の時間変化量です。トランポリンの跳躍では位置=高さで示せます。

 数式で示せば、高さH(t)となります。(t)とは時間で変化する関数であることを示しています。高さを時間で微分するということは、高さの時間変化量を示すことを意味しています。つまり、H(t)を微分すると、速度V(t)になるのです。

 H’(t)=v(t)

です。‘は微分を示しています。逆に速度を時間で積分すると高さとなります。平均速度の場合時間をかけると移動量が求まりますが、これは積分していることになるのです。

 つまり速度と高さは微分・積分の関係にあるのです。同様に速度と加速度の間にも微分・積分の関係にあります。

 微分・積分を知っておくとトランポリンの跳躍高さを解析することができます。

2013年

12月

30日

変位・速度・加速度

 前回速度から見たトランポリンの跳躍をパートについて書きました。今回は速度とは何かについて書きます。速度とは、位置の時間変化量を示しています。一般的に速度というと単位時間当たりの平均速度を指しています。自動車の走行速度なら単位時間として1時間を用いています。1時間でどれだけ位置を変化させることができるかを示しているのが走行速度です。速度が0ということは、時間が変わっても位置が変わらないことを示しています。つまり停止状態です。

 トランポリンの跳躍では、一番高いところと一番低いところで速度0が発生しますが、それはほんの一瞬です。トランポリンでいう速度というのは、単位時間当たりの平均速度ではないことには注意が必要です。

 ちなみに、速度の時間変化量を加速度といいます。さらに加速度の時間変化量を加加速度と呼びます。加速度や加加速度は人間の感覚に大きく影響するそうです。

2013年

12月

02日

上昇・ピーク・下降・着床・最下点・離床

 トランポリンを跳んでいる人の速度の観点から見ると6つのパートに分かれます。上昇加速・上昇減速・上昇停止・下降加速・下降減速・下降停止の6つです。

 上昇加速とはトランポリンにより打ち上げられている状態です。この時に技のかかりを行います。

 上昇減速時はトランポリンから離れて空中に浮かんで上昇している状態です。通常この間に演技を行います。

 上昇停止は、速度が0になった状態で。一番高い位置にいるときです。この時も演技を行っています。

 下降加速は空中で落下している状態です。この際は演技を終了し、次の跳躍の準備をする段階です。

 下降減速は、トランポリンに着床してトランポリンをたわませているときです。つまりトランポリンに弾性力を蓄えるときです。これをトランポリンでは踏みといいます。 下降停止は速度が0になった状態で、トランポリンが最大の弾性力を蓄えた段階です。この時に最大の力が人体に加わりますので、この時には踏みを終え正しい姿勢で身体が締まっていることが大事です。トランポリンで高い跳躍を得るのに最も必要な一瞬です。この時までに正しい姿勢が取れなければ、高い跳躍は得られません。この時より先に技を始めると同様に高い跳躍は得られません。この一瞬をとらえるためにトランポリン選手は何度も練習をするのです。

2013年

11月

18日

トランポリンの得点

 トランポリン競技(個人)の得点には演技点、難度点、Tスコアがあります。Tスコアは最近導入された得点で、滞空時間を11点として得点したものです。演技点は審判3人の得点が合計されますので、難度点0.3あげるのと、演技点0.1あげるのが同じくらい難しいのかと思われます。これについては昔から使われていますので、どちらを上げるのがよいかということについて優劣はそれほどないのだと思われます。

 最近導入されたTスコアについては、Tスコア0.1と難度点0.1、またはTスコア0.3と演技点0.1あげるのにどちらが楽かという問題がまだ検証されていないように思います。もし、Tスコアを上げる方が簡単だとしたら、演技点や難度をあげる練習よりも高い跳躍を出す練習をした方がよいということになります。

Tスコアは10本のジャンプの合計ですので、Tスコア0.1あげるのに必要な1回の跳躍時間はわずか0.01秒です。0.01秒などは人の感覚からいうと誤差の範囲のような気もします。そう考えると誤差の積み重ねが、演技点を上げる努力に勝ってしまうこともあるように思いますが、どうなんでしょうか?

 将来この点を検討して、Tスコアの得点補正が必要なのではないかと思います。

2013年

11月

11日

シンクロ

 機械計測でも誤差が大きいものがあります。それはシンクロ競技です。シンクロ競技では、Tスコアを測る機械2台を用いて2人の選手の着地の時間差を計測しています。その結果を得点化したのが同時性です。

 一方観客や審判が見ているのは選手です。たいていは演技を見ています。空中で宙返りの回転速度や開きのタイミングなどが一緒でなければあまりきれいな演技には見えませんが、機械はそれを計測していません。あくまで着床の時間を計測しているだけです。空中での演技の息があっているかどうかはお構いなく得点化されるのが機械計測による同時性です。つまり見た目と結果の差が大きいのがシンクロ競技における同時性です。

2013年

11月

04日

誤差

 前回書いたように機械計測でも誤差が出ますが、トランポリン競技において最も誤差が出るのは、演技点でしょう。人が目測でジャッジしていますので。

 誤差を除くために、トランポリン競技では、5人の審判によるジャッジを行い、最高得点と最低得点を除いた3つの得点の合計が演技点となります。

 このような誤差は一般的に正規分布すると考えられています。正規分布は真の値を中心にしてそこから離れるにつれて、発生する確率は小さくなります。つまり正しい値に近いほど、多く発生するのです。離れた数値(最高と最低)を除くことにより真の値に近づくと考えられます。

2013年

10月

28日

Tスコア

 Tスコアは滞空時間を得点化したものです。センサーを用いて機械計測しています。機械は高価ですので、持っているクラブは少ないです。そこで、簡易的に滞空時間を計測する方法として、ストップウォッチで計測することがありますが、この数値は必ず大きくなります。それは計測誤差だけではなく根本的に異なる点があるからです。

 人が計測するとき、たいていは単純に10本の跳躍の時間を計測しますが、機械計測の場合人がトランポリンに載っている時間を差し引いて純粋に空中にいる時間を算出しています。つまり、トランポリンに載っている時間分だけ計測に差が出ます。

 もっと細かい話をすると、センサーはフレームから10cm下に取り付けていますので、着床してからベッドが10cm下がるまでの時間が本当の滞空時間に加算されていることになります。つまり、Tスコアは実際の滞空時間より少しだけ長い時間となっています。

 さて、簡易的に計測する方法ですが、ベッドに載っている時間がどれくらいかわかれば、補正ができます。これについてはいくつか論文が出ているようで、0.20.3秒のようです。つまり10倍してストップウオッチの計測時間から23を引けば、おおよそのTスコアは求められることになります。

2013年

10月

21日

高さの式(自由落下)

 h=G×t^22

 理科で習った式で自由落下の式というのがあります。hはものを落とす高さ、Gは重力加速度、tが落ちている時間です。^はコンピュータ上で累乗を示しています。^2は二乗を示しています(h=G×t×t/2と書き直せます)。つまり落下時間の二乗に落下高さは比例します。

 トランポリン選手が実際どのくらいの高さで跳んでいるかということはこの式から求められます。なぜなら跳躍の頂点から落ちるのは自由落下であり、空気抵抗などを無視すれば、上昇と下降にかかる時間は等しいと考えられるからです。

 トランポリンのTスコアは10本の跳躍の滞空時間を11点に点数化したものです。男子のトップ選手のTスコアは18点前後ですので、1回の跳躍は平均すると1.8秒となります。この数値は演技中ですので単純にストレートジャンプをしているときはもっと高くなります。

ちなみにトランポリンの代表的な技術書に「Two seconds of freedom」( Frank Ladue and Jim Norman著)がありますが、この本のタイトルにあるようにトランポリン選手の1回の跳躍の滞空時間は約2秒です。そこで、1回の跳躍を2秒とて計算します。基本的に往復にかかる時間は同じですので、往復2秒、片道1秒となります。先の自由落下の式に当てはめるには、頂点から着床するまでの時間を使いますので、t=1s(s=秒)

Gは一般的に9.8//sとされていますので、hは4.9mとなります。

よくトランポリン選手は7mとか、3階高さまで飛んでいるといわれていますが、トランポリンの高さ1.1mを加えても6mにしかなりません。しかし、座標の時にも書きましたが、選手の目線を中心に考えると、1.5mぐらい高くなりますので選手の見ている高さは7.5mとなります。また3階建ては1階が3.54m、2階は33.5mの階高がありますので、3階の床の位置は7.5m前後になりますので、およそあっていることになります。

まとめると、トランポリン選手が跳んでいる高さといわれる7mとか3階高さというのは、地面からトランポリン選手の見ている地点の高さで、実際の跳躍の高さはトランポリンから5m程度ということです。

2013年

10月

07日

トランポリンを使っても一定の高さまでしか飛べないのはなぜか

 トランポリンではトランポリンの弾性を用いて跳躍します。トランポリンを跳び始めると徐々に高くなりますが、回数を増やせばどこまでも高く飛べるわけではありません。今回はこの理由を考えてみます。

 トランポリンをたわませるのは、ジャンプして落下した時の落下による力と選手自身が加える力です。

 選手自身が加える力をf、落下による力をGとします。ここで、各跳躍の際に選手が加える力は一定と仮定します。

まずトランポリンに載ってトランポリンが静止した状態からスタートすると、最初にトランポリンをたわませる力はfだけです。つまり最初の弾性力T1=fです。2回目の跳躍はT1によって跳ね上がったジャンプの落下分が加わりますので、T2G1+fとなります。

跳躍の際にロスがなければ、G1=T1ですので、T2=2fとなります。これをたとえば10回繰り返していくと、T10=10fとなります。T1T2の比は2倍となりますが、T9T10の比は10/9です。つまり1.1倍です。何回も跳躍していると落下の力が大きくなり、相対的に新たに選手が加える力の影響が小さくなります。このため、ジャンプするにつれて徐々に高さが上がる割合が小さくなり、近似的に一定の高さで頭打ちになるのです。

これに加えて、実際は落下の衝撃に耐えるためや落下のスピードがあがるために選手がトランポリンに加えられる力fは徐々に小さくなると思われますので、跳躍高さは頭打ちとなります。

2013年

9月

30日

トランポリンを使うとなぜ高く飛べるのか

 トランポリンという器具はトランポリンの弾性を利用した跳躍補助器具です。

 でも、トランポリンにそっと乗って動かないでいると、トランポリンに載ってもジャンプしません。トランポリンは電源など動力を用いた跳躍補助器具ではないですから。

でも人が乗れば、トランポリンは変形して弾性力を蓄えています。動かない時は、トランポリンの弾性力は体重と釣り合っています。釣り合いが取れた状態になっているので、動かないのです。

ここで、動いたり揺すったりすると徐々にトランポリンの変形が大きくなります。体重計に乗った場合でも体重計の上で動けば針が振れますよね。これは体重以外の力が、人が動くことで加わるので、一時的に針が振れるのです。

同様にトランポリンに体重以外の力を加えますとより大きくトランポリンがたわみ大きな弾性力を発生します。その弾性力は体重より大きな力になり、人を空中に打ち上げられるのです。なお、人がトランポリンに力を加える動作を「踏み」と呼んでいます。

 最後に、実際は、弾性力を跳躍にする際にロスがあるのですがそれは無視できるものとして今後の話題では扱います。

2013年

9月

23日

錯覚

 トランポリンを跳んでいると初心者でもかなり跳んでいるように感じます。しかし自分が跳んでいるところをビデオに撮ってみるとほとんど跳んでいないように見えます。

 これは目の錯覚です。跳んでいる人の座標は自分が原点、正確に言うと目の位置が原点です。一方ビデオはカメラの位置が原点となります。

 トランポリンで跳ぶ場合、跳んでいる人は目の位置の移動量、すなわちトランポリンが沈んでいる部分+跳躍高さの合計を移動量としてとらえますが、ビデオ映像で見る場合、実際に跳んでいる高さとしてトランポリンからの移動量をとらえます。そのために、跳んでいると感じている量と実際の跳躍高さに違いが出てきます。

2013年

9月

16日

座標変換

 前回跳躍高さの基準について書きましたが、基準というのはどこにしたかをはっきりさせないと話が混乱することがよくあります。

 体操の内村選手に関する番組で、内村選手の視点からみた映像が放映されていましたが、実際は内村選手が回転しているのですが、映像では周りが回転しているものとなっています。この映像は内村選手を基準として、うつされたものだからです。

 さて、我々が住む空間は3次元と呼ばれています。3次元とは3つの軸で表現できるものです。この表現の仕方を座標系といいます。一般的に用いられる座標系は左右方向をX軸、奥行き方向をY軸、高さ方向をZ軸などとして扱うことが多いです。なお、それぞれの軸は直角で交わっています。空間のある1点は(X軸の値、Y軸の値、Z軸の値)の3つの数字で表せます。これを座標と呼びます。座標系を定義して、そこの基準からの数値(座標)を示せば、ある点の位置は説明できるのです。

 なお、3つの軸のそれぞれの基準、すなわち3つの値がすべて0になるところを「原点」

とよびます。

 一般的には床などに設置したカメラで映像を撮りますので、演技をしている選手の位置は動いています。逆に先ほど例に挙げたような撮影法をすると、周りの風景が動いているような映像となります。つまり床が動いているように見えるのです。これは座標系の基準に床を固定として扱うか、選手を基準にして扱うかの違いとなります。

 指導者が見ている選手の座標系は指導者の目線です。一般的には床は動かないものとしての座標系です。実際演技をする選手の感覚上の座標系は選手自身にあります。

 座標系という点からみると選手と指導者では異なる座標系を用いていることになります。

なお、ある座標系で表現された位置を、別の座標系で表現する場合の変換方法を、座標変換といいます。

 指導と選手は異なる座標系を用いていますので、どちらかが座標変換をしなければ、同じものを表現しても、値が異なることになりますので、話は通じないことになります。

 

 競技指導者は選手上がりが向いているといわれますが、他のスポーツと異なり、トランポリンの指導者には競技経験がない人が多くいます。競技経験のない指導者だと選手の座標系の経験がないので、座標変換がうまく行えない。競技経験のない人が競技指導をするのは難しいといわれる1つの要因が、座標変換にあるのではないか思います。

2013年

9月

11日

トランポリン選手はどれくらいの高さで飛んでいるのか?

 トランポリン選手はどれくらい跳んでいるのか? 結構興味のある話題だと思います。この質問に対する答えとしてよく聞かれるのが、7mだとか、3階の高さという回答です。でもこの回答は不正確な回答です。

 ところで、トランポリン競技規則では大会で用いる天井の高さは最低でも8m必要となっています。この場合の高さは床からの高さを示しています。競技用のトランポリンの高さは約1.1mありますので、トランポリンから7m跳ぶ選手がいたら天井にぶつかることになります。つまり、よく言われる7mとかいう高さはトランポリンからの高さではないことがわかります。

 質問する人は、どれくらいの高さといっている場合、走り高跳びや棒高跳びの選手が跳んでいる高さと同じイメージでしょう。つまり純粋な跳躍高さ、跳躍し始めた地点からどれくらいという風にイメージしていると思います。走り高跳びや棒高跳びは地面からですが、トランポリンならトランポリンからどれくらい跳んでいるのかです。それに対する回答としてよく言われるのは、先ほど説明したようにトランポリンからではなく、床を基準にしているようです。このように、基準を明確にして話をしないと、正しい回答は得られないのです。