どうして、レクリエーショントランポリンは社会人向けなの?

 トランポリン指導者の3大任務として、トランポリン競技、社会人のレクリエーショントランポリン、こどもの素養づくり(エアリアル・トレーニング)の3つがあります。素養づくりは神経系の成長がほぼ完成してしまう10歳以下の子ども向けに開発されたトレーニングメニューですからはじめから子どものためのものです。でも楽しく汗をかくレクリエーショントランポリンはなぜ社会人(成人)に限定されているのでしょうか?

 実は、子どもにもレクリエーショントランポリンというものは、ありますがあまり推奨されていませんでした。特に2010年に日本トランポリン協会の普及指導員制度改正以前では、はっきりと推奨されていませんでした。

 運動には大きく分けて、優劣を競うスポーツとスポーツや健康のためのトレーニングの2つがあります(詳細は「どうしてトランポリンにはバッジテストと競技検定の2つがあるの?」を参照)。スポーツとしてのトランポリンがトランポリン競技であり、トレーニングとしてのトランポリンの代表がこどもの素養づくりです。

 さらにスポーツとしてのトランポリンは、2つに分類されます。1つはオリンピックや全日本選手権(メジャースポーツならオリンピックや国体)に代表されるチャンピオンシップとしてのスポーツです。もう1つが健康維持や趣味として行われるレクリエーションスポーツです。

 

 日本の国民スポーツともいえる最もメジャーなスポーツである野球にたとえるのなら、甲子園を目指して強豪高校の野球部に入るのが、トランポリン競技です。これに対して草野球チームには行ってたまに交流試合や市民大会などに参加するようなのが、レクリエーショントランポリンです。野球でも多くの社会人が草野球を行っています。ちなみに、こどもの素養づくりは、体育の授業で行われる野球のようなものです。トランポリンが好き・嫌いにかかわらず身体をはぐくむために、行わさせるべきものです。

 ところで、野球にたとえるのなら、甲子園を目指すようなレベルでなくとも野球が好きで高校野球部に入る人はたくさんいます。こどものレクリエーショントランポリンはちょうどこれに該当します。チャンピオンを目指すようなことはなくとも、トランポリンが好きでトランポリン競技をする事を意味するのです。

 ただ、トランポリンができる環境というのは、野球に比べて非常に少ないので、チャンピオンシップを目指す選手でさえ練習環境が整っていません。そのため、単にトランポリン好きな子どもを受け入れている余裕はなく、また最近までトランポリン競技向けの指導方法というものが確立されておらず、チャンピオンシップスポーツを目指すコーチ以外に、競技向けの指導ができる環境がなかったので、子どものレクリエーショントランポリンは居場所がないという状態に陥ってしまいました。だから、レクリエーショントランポリンというと社会人向けを意味するようになっていました。なお、社会人に対してはレクリエーショントランポリンが推奨されているのは、社会人の中から後進を育成する普及指導員の誕生が期待できるからだと思われます。

 

 以上のようにこどものレクリエーショントランポリンは日陰者の扱いを受けていました。このため、レクリエーショントランポリンは特に明示しなくとも社会人向けだとされてきました。しかし、最近トランポリン競技向けの指導法が作られ、宙返りを含まない部分までは、普及指導員がその指導に当たるようになりましたので、今後は「レクトラ=社会人向け」ではなく、「レクトラ=子どもも含めて、トランポリンを愛するすべての人を対象としたもの」となっていくと思われます。