どうして膝を伸ばすの?

 実はトランポリン選手は、膝を曲げて踏み込んで、跳んでいます。でも一般には膝を曲げないように教えます。その理由は以下の3つです。


1)トランポリンを利用するには、トランポリンの弾性を使うことが必要です。トランポリンの弾性を発生させるにはトランポリンをたわませる必要があります。トランポリンをたわませるのにトランポリン選手は膝の曲げ伸ばしを使いますが、トランポリンに着床してからトランポリンがたわみきるのはわずか0.1秒ほどのことです。この間に膝の曲げ伸ばしを行うのはかなりの熟練が必要です。そしてうまく連動しないと、本来トランポリンをたわませる落下の勢いを膝で吸収してしまいます。逆に膝を伸ばしておけば、落下の勢いで十分トランポリンはたわませることができ、安定して跳べますので、膝は曲げないように指導されます。


2)発生させた弾性力を有効に使うには、トランポリンから加えられる力をすべて上昇力に変える必要があります。このとき、膝が曲がるとトランポリンが跳ね上がってくるのを膝で吸収してしまいます。そして、膝が伸びた状態なら、トランポリンの弾性力がトランポリンから加わる弾性力を骨で受け止め、身体全体に伝えることができますが、膝を曲げてしまうと筋肉で受け止めることが必要になります。トランポリンの弾性力は人間を何メートルも打ち上げるほどのものですから、筋肉では受け切れず、身体全体に伝えることができません。そのため膝が曲がっているとずっこけたり、変な方向へ吹っ飛ばされたりします。だから膝を伸ばす必要があるのです。

 

3)トランポリンでは垂直に跳ぶことが大事です。言い換えれば、重心の平面移動をせずに上下運動だけをするのがトランポリン運動です。膝を曲げるということは重心の水平移動が起こります。特に膝を伸ばす時に重心がまっすぐ上下移動するようにできないと、跳躍が不安定になります。膝の曲げ伸ばしを使って跳躍すると、ジャンプが不安定になりがちで、相当の鍛錬が必要です。初心者や高い跳躍を必要としないエアリアルトレーニングを受けている子ども、レクレーションとしてトランポリンを行っている人は膝を曲げない方がよいのです。

 

 以上の3つの理由のため、跳躍高さそのものが得点になる競技選手を除いて、安定して跳ぶために、膝を伸ばしたまま跳ぶことが推奨されています。