安全なトランポリンを目指して 第1部:事故件数
2013年
9月
01日
日
はじめに
たとえばスキューバ・ダイビングには事故とその過失責任や判例などまとめた書籍が何冊か出版されています。またスキー・スノーボードでの事故については、事故防止を目的に事故がどれくらい発生しているかを集めた以下のようなサイトがあります。
http://www1.ocn.ne.jp/~itabashi/index.htm
http://homepage3.nifty.com/skis/story_01_02shibou.htm
しかし、トランポリンについてはそのような資料はありません。
トランポリンは危険といわれていますが、どれほどの事故が起きているか、またどんな事故が起きているかとまとめた資料はほとんどありません。単に指導者の下で指導を行えば、安全であるということが言われている程度です。指導者がいない場合の危険性を示す具体的な証拠もありません。
けがが起きた場合、けがをした本人のプライバシーやその人を指導している指導者の法的な責任問題などの関係からあまり公にできないことが多いようです。一方、事故の事例が集まれば、安全対策も取りやすくなり、トランポリンをより安全なものにしていくことができます。
また、万が一事故が発生した場合の責任などについての知識をまとめた資料もありません。
トランポリンを安全に普及していくためは、指導方法の確立とともに、トランポリンの事故の事例研究と指導者や施設管理者の責任についてまとめた資料を作成することも重要と思われますので、インターネットを利用して、事故事例を集め、また法的な責任や判例などをまとめたいと考えています。
なお、著者は弁護士など法律の専門家ではありません。独学で勉強した範囲の知識で書いております。法的な解釈などについては間違いがあるかもしれませんが、トランポリンをより安全にするためのたたき台としてこのコーナーを始めることにしました。
2013年
9月
04日
水
トランポリン事故の発生件数
トランポリンにおける事故はどれくらい発生しているのでしょうか?これは非常に難しい問題です。なぜなら我々トランポリン教室や、トランポリン競技で使用するトランポリンだけがトランポリンではないからです。体操競技の練習補助器具であるミニトランポリンやタンブリングトラック(トランポリントラック、通称タントラ)も、家庭用のミニトランポリンももっと大型の円形のものも、遊技場やイベント会場に見られるエア遊具や公園などにある膜状の遊具もトランポリンと呼ばれるからです。
つまりトランポリンの事故といっても、本格的な競技器具も、遊具もまとめてトランポリンとして扱われているからです。
だから、トランポリン事故といっても、一般的には旧日本トランポリン協会の検定品以外の器具による事故も含まれるためその数は、本来のトランポリン運動またはトランポリン競技における事故件数よりはるかに多くの件数がカウントされることになります。
それを前提にインターネットを利用して、発生件数に関する資料を集めてみました。
次回からそれを紹介していきます。
2013年
9月
08日
日
事故数に関する資料(カナダ)
国内の事故件数を示す資料はあまりないので、まず海外のニュースから紹介しておきます。まずカナダのトランポリン事故に関するものです。
http://blog.livedoor.jp/goqic/archives/50512800.html
引用サイトでは「大人がトランポリン上の子供を常に注意深く見守るべきと話している。」とあります。海外の場合は日本の住宅事情と異なり、広い庭を有する家庭が多いことから日本ではあまり見られない大型の円形のトランポリンを所有する家庭も多いことから、このようなことが注意点として挙げられているものと思います。つまり指導者のいない状態での事故が多いものと推定できます。
またトランポリンがある家庭が日本より多いため、日本のトランポリン環境に比べて、より事故件数が多くなるものと思われます。
2013年
9月
15日
日
事故数に関する資料(スウェーデン)
今回はスウェーデンのトランポリン事故に関するものです。
http://news.livedoor.com/article/detail/4866752/
http://www.campuscity.jp/headlines/hl5770
スウェーデン 2008年に年間5000件の事故が発生しているそうです。2009年もさらに数100件以上増加していると報じられています。やはり庭にトランポリンが設置してある家庭が多いことが事故の増加に影響しているようです。
けがの場所は、手首、足首、指、腕の捻挫が一番多く、首や頭部外傷も一般的にあるようです。典型的な事故は複数で跳んでいての衝突や落下によるものだそうです。性別は女子のほうが多いとあります。
でも、「正しい遊び方で使用すれば危険は無い」と結ばれていますように、トランポリンは一人で利用し、正しく利用すれば問題ないと思いますが、国内においても児童館や民間遊戯施設では複数での利用をさせているところも多くあり、トランポリンは一人で使用するものということを世間に広めていく必要があるものと思われます。
2013年
9月
22日
日
事故数に関する資料(スコットランド)
今回はスコットランドのニュースからです。
http://japan.techinsight.jp/2009/06/trampoline_0906110245.html
6週間で50人がけがをしたとあり、その内訳は、約46パーセントが大人の監視不足で、64パーセントがセーフティーネットを使用しておらず、中には飲酒した大人もいたということです。
飲酒してスポーツをするというのは、論外の行為ですが、ここでも以前の記事同様大人の監視不足が指摘されています。指導者がいない状態での危険性を示す資料です。
事故の原因にセーフティーネットが書かれていることから、転落による事故が多かったものと推定されます。
2013年
9月
28日
土
事故数に関する資料(韓国)
今回は韓国のニュースです。2013年で277件の事故が起きているようです。
http://sportsseoul.jugem.jp/?eid=8051
さらに、この1年間で事故件数が3倍に増えているようです。記事にははっきり書かれていませんが、「トランポリン施設は申告や許可が必要なく施設に対する基準もなくて、安全点検もなされておらず年齢と利用可能人員を制限しない所が半分を越えた。」とあることから、韓国では、教室のようなものではなく、アミューズメント施設のようなものが増えているため事故件数が増えているみたいです。
アミューズメント施設では、1度にたくさんの児童が使えるところがあります。以前紹介したスウェーデンの時にも書きましたが、トランポリンは1度に複数で使用するとトランポリンの構造上衝突(※)による事故が起こります。しかし1度に一人しか使えないとなると、回転率が悪い器具となりますので、商業的に収益が低くなります。しかし怪我の発生を抑えるためには、1度に一人を徹底させていくべきと考えます。
※ トランポリンは構造上、跳んでいる人を中心部に自然に移動させる性質を持っています。複数で跳んでいれば、中心部に集まって衝突するのは自然の理です。この点については別途あらためて説明を書く予定です。
2013年
9月
29日
日
事故数に関する資料(アメリカ)
今回はアメリカのニュースです。アメリカは桁違いに事故数が多いです。2009年に9万8000件の事故が起き、そのうち3100人が入院となっているようです。
http://www.huffingtonpost.com/2012/09/24/home-trampolines-for-kids_n_1909199.html
上記が出典もとでそれを引用した日本語のサイトとして以下のものがあります。
https://www.facebook.com/harikyu3989/posts/276110029172734
http://healthnews151.blog.fc2.com/blog-entry-142.html
http://www.healthdayjapan.com/index.php?id=4132&option=com_content
http://irorio.jp/sousuke/20120926/29362/
上記記事によると、「ほとんどの事故はトランポリンそのものの上で起きており、怪我の約半数が足首のねん挫などの下肢のけがであるが、頭や首のけがも10~17%起きており、神経障害や重い後遺症を伴うケースもあり得るという。」ということです。
事故の大半は以前紹介したスウェーデンの事例と同じでこれは日本においても変わりはないと思います。
発表したのは、アメリカの小児学会で、家庭用トランポリンの設置自体をやめるように提案しているようです。とにかく指導者のいない状態でのトランポリンはかなり危険性が高いといえるようです。
頭部・首のけがは1割はいるということは、1万人ぐらいはそのような事故が起きているという計算になりますね。またけがをした人のうち3%が入院を要する大事故となっているようです。
2013年
10月
02日
水
事故数に関する資料(アメリカ2)
今回もアメリカの話題です。
http://www.fctimes.jp/current/y13m01/010613_4.html
LIFE誌が「トランポリンは危険」としたため、アメリカのトランポリンセンターの多くはつぶれたというのは、トランポリンの歴史をみると必ず書かれています。しかし、最近また同じような施設ができているようです。そして日本でも最近増えつつあります。
この記事中に「監視役として、お飾り程度に、適切な訓練すら受けていない十代の若者をアルバイトで雇うところもある」とあるように、専門的な知識や教育を受けていないこともあるようですが、少なくとも監視役はつけているようです。日本には監視役もいないでトランポリンを行える民間施設がありますので、この点はアメリカの方がよりましな状況にあると思います。
上記の記事によると、さすが訴訟大国であるアメリカ、1つの施設を相手にすでに20件以上の訴訟が起きているようです。日本ではまだそのような訴訟はないようですが、いずれ起きる可能性は否定できません。そうならないためにも、この資料を整備しています。
2013年
10月
06日
日
事故数に関する資料(アメリカ3)
今回もアメリカの話題です。保険会社のスポーツにおける傷害の調査結果(2010年)が以下に載っています。
http://www.sj-ri.co.jp/research/insurance_finance/pdf/fact_2012.pdf
体操競技による負傷者数は年間27,483人いたようで、このほかにトランポリンによる負傷者は92,159人だそうです。つまりアメリカにおいては、体操競技の3倍程度の負傷者数がトランポリンにおいて発生しています。これはかなり高い確率だと思います。
これは、アメリカでは家庭用トランポリンや以前紹介したようなトランポリンセンターが普及しているため、競技スポーツとしてではなく遊具としての利用が多いため、そのようになっているのではないかと思います。
2013年
10月
13日
日
保険(アメリカ)
今回もアメリカの話題です。前回、保険会社のスポーツにおける傷害の調査結果を紹介しましたが、今回はアメリカの保険についての話題を紹介します。
http://www.lgisinc.com/jp/q-and-a.html
上記は日本の保険とアメリカの保険の違いを説明したサイトですが、その中の住宅火災保険のところでトランポリンについての説明があります。
アメリカではトランポリンは保険の引き受けを断られる場合があるようです。
以下のサイトでも同様の趣旨が説明されています。
http://portland.junglecity.com/pro/insurance/05.htm
なお、自分の経験上では、住宅火災保険の中の家財に対する保険がありますが、トランポリンを家財として保険に掛けることはできました。
アメリカにおいて、トランポリンは危険というのが保険会社の認識にあるため引き受けを断ることがあるのだと思われます。
2013年
10月
20日
日
保険(日本)
日本においては、民間保険会社の販売するスポーツ傷害保険に比べて格安のスポーツ安全協会のスポーツ安全保険を利用するのが一般的です。スポーツ安全保険では年齢による区分けはありますが、スポーツ種別によるランク分けはないのであまり知らない方も多いと思いますが、保険会社はスポーツの危険性に応じたランク分けが行われています。
スポーツ傷害保険やレクリエーション保険などでは行うスポーツの危険性によってランク付けがあり、危険性の高いスカイダイビングなどには利用できないようになっています。ランクによって同じ補償内容でも掛け金が違ってきます。当然危険性が高いスポーツは掛け金が高いです。
ランク分けはたとえば、以下のように3区分にしていることが多いです。
http://www.i-kyosai.or.jp/02_jigyou/sports/index_supo.html
http://www.kinoshita-hoken.co.jp/recreation_panf.pdf
両方とも、トランポリンは2つ目のランクになっています。これより日本においてトランポリンは、スキーやサッカーよりは危険性の少ないスポーツとして扱われていることがわかります。しかし今後トランポリンが普及して事故件数が増えれば、ランクが下がる可能性はあります。そうならないためにも、安全対策が必要です。
2013年
10月
27日
日
国内におけるトランポリン事故
日本におけるトランポリン事故はアメリカのように保険会社の調査結果などはなさそうですし、医学会などからも発表されていません。トランポリンはレジャー性が高く、スポーツとしてのトランポリンではなく、遊具としてのトランポリンというのも混在してトランポリンと呼ばれています。
たとえばトランポリンの事故で検索すると、遊具における事故をまとめた以下のようなものが出てきます。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~tanken/danger/case1/ca1-par.htm
トランポリンではなくエアトランポリンでありますが、同施設で骨折をはじめとする5件の事故が起きているそうです。なお、この施設の事故については、日本トランポリン協会の平成16年度の第2回理事会でも報告されています。
2013年
11月
03日
日
エアトランポリンの規制
トランポリンという名称がつけられたものにエアトランポリンがあります。エアトランポリンはエア遊具の1種類であり、エア遊具でかなりの事故が起きているそうです。そのため、消費者庁が監督官庁になり、事故情報や分析を行うことになっているようです。
http://www.irric.co.jp/risk_info/pl/pdf/PLreport2010_10.pdf
上記サイトに、あるように監督官庁がない場合でも事業者は地方自治体や国民生活センターに事故の報告をする義務があるようです。
2013年
11月
10日
日
エア遊具の規制
まだトランポリンには規制はないですが、前回紹介したようにエア遊具に対しては規制が始まっていますし、業界団体による安全基準というのが整備されています。
エア遊具使用の10か条
http://www.caa.go.jp/information/pdf/110131airyugukohyo.pdf
まだ、トランポリンにはそのような基準はありませんが、いずれは協会あるいは業界組合で安全基準を作らなければならないかもしれません。
2013年
11月
17日
日
児童福祉施設におけるトランポリンの事故
トランポリンの事故数に関する調査資料はあまりありませんが、児童福祉施設における事故調査については、厚生労働省が調べた資料があります。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1029-3.html
平成8年から12年の5年間でトランポリンの事故は68件起きています。トランポリン自体の数が少ないせいかもしれませんが、ほかの遊具に比べて発生件数は少ないようです。
なお、この報告書で死亡事故が起きている箱型ブランコは全国的にほとんど撤去されたか、固定されて使用できないようになっています。
2013年
11月
24日
日
商業施設におけるトランポリンの事故
国民生活センターの商業施設における事故に対する調査結果があります。
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20130606_1.pdf
この中でトランポリンを含めて乗ってジャンプする遊具をジャンピング遊具としていますが、それによる事故例が3件紹介されています。そのうち2件は肘の骨折事故です。
また遊具種別ごとの事故件数がまとめられていますが、ジャンピング遊具は最も事故件数が多いものとなっています。
そして、子どもを見守るスタッフや従業員がいたかという問いに対して、20%がいなかったと回答されており、たまにいた(つまり常時はいない)を合わせると半数近くの施設で監視などが行われていないという状況にあることがわかります。さらに、スタッフがいても十分な人数であったかということに対して約1/4が不十分と回答しており、スタッフから使用方法や安全注意を受けていないというケースが1/3に上がっています。
海外の事故件数を紹介した時も大人による監視がない状態での事故が多いことは明らかであり、今後このような遊具施設でも十分な人員の配置などが必要だといえます。
2013年
12月
01日
日
学校の事故
以前保険会社による調査結果はないと書きましたが、スポーツ安全協会と日本スポーツ振興センターが保険を用いた人の事故について調査を行っています。日本スポーツ振興センターとは、学校行事における事故に対する保険を取り扱っていて、我々に身近なスポーツ安全協会は学校外の事故に対する保険を取り扱っています。
スポーツ安全協会からは刊行物として出していますが、入手した平成8年度版ではスポーツの種別として「トランポリン」はなく、体操競技かその他のスポーツに分類されているようで、トランポリンの事故がどれくらいあるかはわかりませんでした。
一方、日本スポーツ振興センターはホームページにデータベースが掲載されています。
http://www.jpnsport.go.jp/anzen/home/tabid/102/Default.aspx
つまり、日本スポーツ振興センターのデータベースは部活や体育の授業その他学校行事における事故についてだけで、トランポリンのように体育に取り入れられていることが少なく、部活もほとんど行われていないスポーツの事故件数は少ないはずです。
しかし、検索したところトランポリンに関する11件の事故が見つかりました。この時点で登録されている検索し時点で4098件の事故が登録されていましたので、全体の0.3%弱がトランポリンに関する事故となりますが、トランポリンが学校で行われる機会からすると少々多いのかもしれません。
2013年
12月
08日
日
学校の事故2
前回紹介したデータベース登録されたトランポリン11件のうち頭部落下による神経障害が3件、上肢または下肢切断・機能障害となったものが4件、歯牙傷害2件あります。
発生場所は特別支援学校が3件、高校3件、中学1件、小学2件、幼稚園1件、保育園1件です。
神経障害の3件は部活によるもので、2件は宙返りの失敗であることがわかります。授業中は1件で、2件は複数で利用していたために起きた事故、他の多くは休憩時間中などに起きた事故でした。
以上の事故を見ると指導者や監視が行われていない時に起きている事故、部活は宙返りによるもの、複数で利用したために起きた事故と今までに紹介した事故と原因はおおむね同じです。
なお、学校における事故の場合、部活を除けば普及指導員のようなトランポリンの専門的な指導者ではなく、一般教職員が指導・監視していたものと思われますので、トランポリンクラブなどよりも事故が多くなっている可能性は否定できないと思います。
2013年
12月
15日
日
学校の事故3
「スポーツ事故の総合的研究」三浦嘉久 編著 不昧堂 平成7年10月という書籍によると、平成3年度に発生した学校管理下の交通事故以外の事故1,062件中、体育活動による事故は480件で、そのうち1件がトランポリンでの事故だそうです(発生場所は高校)。比率からいうと体育活動中の事故の0.2%がトランポリンでの事故となります。
前々回紹介したデータベースでも0.3%程度の事故が発生していましたので、学校におけるトランポリン事故は0.2~0.3%程度のようです。
2014年
2月
16日
日
消費者庁から発表された「注意」
以前国民生活センターの商業施設における事故調査について書きましたが、その続報的に消費者庁から、国民に対してアミューズメントセンター(室内遊園地)の利用に関する注意事項が発表されました。
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/121219kouhyou_1.pdf
この「注意」にはトランポリンは書かれていませんが、アミューズメントセンターにトランポリンが設置されていることは、珍しくありません。利用する場合は、上記の注意事項を実施して利用することが安全につながります。