2022年

4月

15日

膝落ちは危険な種目

 膝落ちは段階練習表のかなり早い段階で習う種目ですが、簡単な反面危険度が高い種目でもあります。

 だから膝落ちを実施する場合、低いジャンプで行う必要があります。

 ではなぜ膝落ちは危険なのでしょうか?

 それは、膝落ちは姿勢制御が難しい種目だからです。

 人間のからだの構造を下半身だけ見ると、下から足首関節、膝関節、股関節の3つの関節があります。これらは回転できる半ピン構造になっています。さらに腰や背骨では、湾曲することによりある程度回転できる構造になっています。人はこれらの回転を使って姿勢を制御しているのです。

 ところで、回転の方向には制限があります。下図の場合、足首は反時計回り・時計回り両方に回転できる構造となっています(反時計回りの方が回転できる角度は小さい)。これに対して膝関節は時計回りに、股関節は反時計回りに動きその反対方向はほとんど動かない構造になっています。

 

 

 先ほどは立位の場合でしたが、膝落ちの場合以下のようになります。もっとも角度調整ができる足首関節はベッドに押し付けられ、姿勢制御に使用することが出来なくなっています。これのため膝落ちでは回転量の制限が大きい膝関節と股関節の2つで主に姿勢を制御しなければならないのです。

 

 だから、膝落ちは姿勢制御が難しく、危険性が高い種目となるのです。

 

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2022年

4月

21日

膝落ちは腰を痛めやすい

 

 膝落ちではしばしば腰を痛めます。その理由は前回書いた様に姿勢制御が難しいためです。

 

 関節の両側が直線的になっている状態(伸ばした状態)を角度180度とすると、膝落ちでは、足首関節は180度、膝関節は90度、股関節は180度であることが理想的です。しかし膝関節が90度を超えている場合下図のように大腿は前傾していることになります。

 このような状態で、上半身を垂直に保とうとすると腰を反らせるしかありません。

  さらに、大腿が前傾しているため、ベッドの弾性力は斜めに働き、矢印線で描いた様に水平成分を持つことになります。この水平力は重心を前に動かす作用を作り出します。その動作は、胴体を曲げる働きをしますので、腰を反らすようなたわみを発生することになります。

  姿勢制御と重心を前方に動かす動作が同時に起こるため腰を痛めやすいのです。

 

 

2022年

4月

28日

膝落ちは前方回転しやすい

  前回腰を反らして上半身が垂直に保つ場合について書きました。この場合腰を反らせる方向に力が働くので腰を痛めやすいのです。では腰を反らさないとどうなるでしょうか?

 

 腰を反らさないとした図のよう前傾した姿勢になります。その結果重心は膝より前に出ることになります。体重は下向きにかかります。また前回書いた様に水平方向に働く力もかかります。その合力は斜め前方下向きに働き、膝を支点とした強い回転運動を引き起こします。トランポリンでは上方にかかる反力もありますので、その結果空中で前方回転をするような運動が起こります。

 

 顔面から落ちたり、手だけで着床し腕の骨折や脱臼を起こしたり、胸から落ちてしゃちほこのような態勢で落ち大きく腰を反らせて腰を痛めたりする危険性があります。

 

 以上から上体を垂直に保たないのは非常に危険な体制であることがわかります。

 

2022年

5月

06日

視線を下げると

 

 視線を下げると首関節が回転し、頭の重心は体軸より前方に移動します。そのため、膝を支点とした回転運動が起こります。

 上体を傾けた場合に比べてその力は小さいですが、同様に前方回転を引き起こす回転力が生じます。

 また、首を傾けるとそれに連動して上体も傾くことが多いので、前回同様の事故の危険性があります。

 

 なお、人間の性質として、落下位置を確認しがちです。そのため、視線が下がり、首が前傾し、それによって前方回転が引き起こされやすいのです。

 

 以上のように膝落ちは簡単にできる種目ですが、危険性も高い種目であることを忘れてはいけません。

 

2022年

5月

12日

膝の角度を90度未満にすると

  今回はひざの角度を90度未満にした場合を考えて見ます。

 

 上体を垂直に保つときは、腰は前傾します。腰はもともと前傾しやすい構造になっているので、この場合腰を痛めることはありません。

 また、体の重心は後方にずれていますので、ひざを支点とした後方回転力が発生しますが、ひざより前に体のパーツがない前方回転の場合と異なり、すね・足により反力を得られますので、回転を止めることは容易です。

 本来ひざ落ちは水平力発生させないように大腿・上半身がまっすぐ立った姿勢が理想的です。よって、この姿勢はひざ落ちとしては正しい姿勢ではありませんが、安全な姿勢となります。

 

 理想的な姿勢を最初から求めるとわずかな調整ミスで、腰を痛めたり前に突っ込んだりする危険性がありますので、初心者のうちはひざを角度を90度よりやや小さくした状態で行うほうがよいと考えられます。

 

 

 

 

2022年

5月

26日

バッジテストでは手を付かなければよいとされている

 前回、初心者はひざの角度を90度より小さくしたほうがよいと書きました。しかしその角度が大きくなると(特に45度を下回ると)、今度はひざを支点とした後方回転力が強くなり、その結果お尻が落ちる運度を引き起こします。支えきれなければお尻が落ちて脚の上に乗ることになります。正座の状態です。

 

 塩野尚文著『エアリアル・トレーニング 子どものトランポリン運動(道和書院)』(道和書院)には、バッジテストの判定基準として“膝落ちの時、正座の状態になり、さらに手をついていた場合”大過失として扱うことになっています。つまり正座の状態になっても手を突かなければ、小過失として合格にしてよいのです。

 ひざ落ちは最初に受験する5級ですでに実施する種目です。バッジテストを受験する子供の中には運動嫌いの子も多く含まれており、そのような子は筋力が極めて弱い子も多くいます。

 

 前回書いたように、理想的なひざ落ちをさせると怪我をする危険性が高くなります。安全重視で言えばひざの角度を小さくしたほうがよいです。でもひざの角度を小さくすると、調整ミスで小さくしすぎたり、筋力がなくわずかな回転力でも抗し切れずお尻が落ちてしまう場合が多くなります。これを防ごうと角度を大きくしようと指導すると、今度は怪我の危険性が高くなりますので、安全を重視してお尻がおちた状態でも大過失として扱わないように判定基準は考慮されているものと考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

2022年

6月

09日

膝落ち→腰落ち

 膝落ち→腰落ちではしばしば後ろに跳んでしまいがちです。

 膝落ちから腰落ちをするには、膝を前に振り出します。これは膝を支点とした後方回転運動になります。

 上半身を後ろに倒す事でも後方回転はかかります。膝を振り出すより重い上半身を倒す方がより簡単に後方回転をかけることが出来ますので、しばしばしてしまいがちです。

 膝落ちの状態から真上に跳び上がって、膝を振り出すのが正しい運動です。また、上体を倒して回転をかける癖をつけると上体を垂直に保っていなければならないケースで背落ちのようになり、首から落下などの危険性がありますので、状態を垂直に保ったまま真上に上がって膝を伸ばせるようにしておくことが重要です。